梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

政界・官界・産業界

暗号資産課税の攻防

国レベルの政府・行政機関の役割として重要なのは、社会福祉政策でも産業政策でもない。まずは防衛・外交・収税・通貨である。このうち収税以外の3項目は、直接票につながらないので、政治家には重要視されないという問題がある。ただ税金に関しては、有権…

三方一両損の政治改革

自民党の裏金問題で、政界全体が揺れている。立憲民主党の泉代表は「ミッション型内閣」を提唱しているが、その実現性は低い。維新の会や国民民主党は、憲法・原発・国防など基幹政策で合意できないと、連立は難しいとしているからだ。私も、少なくとも外交…

AI課税の対象となるのは・・・

昨日に続いてAI関連の話題。AI活用は、ホワイトカラー層の雇用を奪うとされる。ゴールドマン・サックスのトレーダーが、AI導入で600⇒2名になったのがその典型例。放置すればごく一部のAIを駆使できる人と、その他の人の格差が広がると懸念されている。そこ…

外務省は経済官庁

もう20年以上前のことになるが、ある業界団体の会合に外務省審議官がやってきて時事国際情勢について講演した後の懇談で「産業界のみなさんには知られていないが、実は外務省は(経産省などと同様)経済官庁なのです」と言った。正直驚いて、いろいろ質問し…

沖縄のハコモノ行政、変わらず

今月、家内と4年ぶりの沖縄旅行に出かけた。春節と日本の三連休が重なって、とても混みあう時期だった。往復のフライトも満席、コンドミニアムの予約も希望のところはとれなかった。空港でも、街中でも、モノレールの中でも、外国人の会話が目立つ。南国か…

「いずれにせよ国民負担です」

自民党の裏金問題が「政治とカネ」論議に火をつけ、予算委員会では政倫審・連座制・政策活動費などなど国会議員周りのQ&Aがほとんどの時間を占めている。どれも自民党としては呑みづらいことで、岸田総理らの回答は歯切れが悪い。「こんなことは早く政倫審に…

もう一人「古い戦友」からの贈物

昨年、NTTグループのCISOであり、サイバーセキュリティ業界の「戦友」でもある横浜信一氏から贈られた書「サイバーセキュリティ戦記」をご紹介(*1)した。今年になって、もう一人古い「戦友」から「テックラッシュ戦記」という書(*2)をいただいた。NTTグ…

重要経済安保情報の扱い

何度かこのブログでも取り上げてきたセキュリティ・クリアランス(SC)制度の法整備が、ようやく進みそうだ。自民党裏金問題の追及に明け暮れる事態で、能動的サイバー防御(ACD)の法案も通常国会では見送られる(*1)と言われ、SCの法整備も難しいかと思っ…

共同システムのオープン化は朗報だが

私は現役時代、銀行システムに携わっていたことが10余年ある。開発や保守ではなく、どうしたら業務をデジタル化して改善するかという仕事(現在でいうならDX企画)だった。そのため銀行業務の現場を取材したし、当時の「金融Big-Bang」の潮流も勉強した。そ…

科学・イノベーション・技術省訪問

次の訪問先は、昨年スナク政権の下で再編されたデジタル関連を管掌する科学・イノベーション・技術省(Department for Science, Innovation and Technology:DSIT)。日本のデジタル庁の機能に加え、電気通信事業の規制を担当するから総務省の一部、研究開発・…

国家サイバーセキュリティセンター訪問

次の日の午前、訪問先は国家サイバーセキュリティセンター(National Cyber Security Centre:NCSC)である。こちらはれっきとした政府機関で、外務・開発大臣麾下の政策通信本部(GCHQ)の一部門。訪問者にも本名を明かさず、一部の人(管理者?)を除いて…

大川原化工機事件に見る不安

昨年末、ある意味珍しい判決が出た。噴霧器などを製造販売している大川原化工機の社長ら3名が逮捕・起訴されたものの、初公判直前に基礎が取り消された事件について、司法は「警視庁公安部と東京地検の捜査が違法である」として、国と東京都に賠償金支払い…

歪んでしまった<ふるさと納税>

師走は「お師匠さんも走る」ほど忙しく、駆け込みの何かが多い季節。最近は振替・振込もなどの決済物は自動化され、かつてほどの繁忙ではないようだが年末期限というものは存在する。昨年末も、ネット広告などで「ふるさと納税、お急ぎください」のメッセー…

「年賀を飛ばす」覚悟で(3/終)

ユニバーサルサービスであり、かつ年賀という特殊要件を持っている日本の郵便局ネットワークが、減り続ける人口やデジタルメディアの普及という圧力から容易に抜け出せないのは分かる。しかし、現実に数字はマギレの余地なく合理化を求めてくる。 郵便料金が…

「年賀を飛ばす」覚悟で(2)

郵便局ネットワークは、郵便貯金や簡易保険など金融事業も大きくなっていたから、他の金融機関と同等のITシステムや窓口機器を備えるようになっていた。ピーク時20万台ほどもあった国内ATMだが、全体が減り続けても日本郵政のATM保有数は最大級である。 加え…

「年賀を飛ばす」覚悟で(1)

今年5月、日本郵政の増田社長が「郵便局の統廃合」を口にしたところ、猛烈な反発に逢った。2040年というかなり先に向けて「検討する」としただけなのに、 ・全国郵便局長会会長と会談 ・従業員に説明のメールを送り ・自民党(旧郵政族?)にも説明 するな…

政治空白が影を落とす

防衛安保関連三文書改訂がなって、1年が経った。8つの項目について、防衛力強化が謳われたのだが、1年間に実効を上げた分野と停滞している分野があるという。 反撃能力の整備加速 課題先送り、政権弱体化が影―安保3文書1年:時事ドットコム (jiji.com) …

半歩前進?中途半端?

一時期、少しは期待していた「ライドシェア解禁」、結局は中途半端な結果に終わりそうだ。今年久しぶりに海外出張に行き、オーストラリアで何度も「Uber」を利用した。非常に便利な交通手段であることは、いまさら繰り返す必要もあるまい。しかるに日本では…

Cyber Initiative Tokyo 2023(第二日)

初日の夕方の打ち上げパーティで、多くの人に出会えたものの、翌朝は最初のパネルに登壇することになっている。早々に引き揚げ、翌日も朝早い新幹線に乗った。本日のテーマは「セキュリティ・クリアランス(SC)」。日本でも導入が検討されているが、まだ詳…

産官学連携に期待する

先週、一般社団法人「サイバー安全保障人材基盤協会」が発足した。発足式には、別件があって参加できなかったのだが、その設立趣旨に賛同し、何らかの協力をさせてもらえればと思っている。 サイバー防衛人材育成へ新法人 NTTなど5社、資格創設促す - 日本経…

診療報酬改定の綱引き

岸田政権の迷走が目立っている。例えば、異次元の少子化対策(実態は子育て支援)をする一方で、高校生の扶養控除を削減するというチグハグさ。子育て支援の充実も重要だし、税の簡素化の立場から控除の縮小も正しい。ただこれを同時にやるというのが、市民…

「遅すぎる」のは貴方の方も

経団連の、というより十倉会長の発言に関し、メディアが冷たくあたることが多くなった。例えば、 経団連会長が「岸田支持!」「消費増税せよ!」と叫ぶ裏にある、輸出大企業と政府との「国民生活度外視の共犯関係」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース のよう…

「中堅企業」支援の方向性(3/終)

では「中堅企業」と指定されると、何が優遇されるのか?それについては<産業競争力強化法>を改正するということしか、記事からは読み取れない。そもそも大企業の中小企業の違いとは、税法上は「資本金が1億円以下かどうか」である。昨今の「COVID-19」禍…

「中堅企業」支援の方向性(2)

先々週のNHK「日曜討論」で、実業家/著述家の冨山和彦氏が「M&Aで事業が優れた経営者のもとに集まれば、課題の多くは解決する」と発言していた。課題の中には「DX with Security」も含まれているに違いない。以前経済財政諮問会議委員だったデーヴィッド・…

日本のサイバー防衛、2027(3/終)

大学教授は産業界から政府を動かせといい、シンクタンク研究員はこういう安全保障環境を知って欲しいと言った。御二人の提案に異論はないのだが、参加者の顔色(当惑?)を見て、一言言っておく必要があると手を挙げた。 ・今日はサイバー空間の話だが、それ…

FortinetとALAXALA

ある会合で、Fortinet-JapanとALAXALAネットワークスの幹部とお会いした。Fortinetは、世界最大手の統合脅威管理(UTM)の製造販売メーカである。激化するサイバー攻撃の大半はネットワーク経由だから、ネットワークセキュリティの最大手ということで、サイ…

経営者こそリスキリング

今週のNHK「日曜討論」、テーマは人手不足と賃金UPだった。普通の経済モデルでは人手不足なら賃金が上昇するのだが、今の日本はそうなっていない。その原因は、 ・非正規労働者が増えすぎた ・労働組合が正社員しか守らない ・ブラック企業が少なくない ・多…

IT協会のサイバーセキュリティ研究会

(財)企業情報化協会(通称IT協会)は、企業のDXなどを促進するためのイベントや勉強会を多数企画・実施している。私もいくつかの企画に参加させてもらっているが、中心となっているのは「サイバーセキュリティ戦略マネジメント研究会」。今年で第9期を迎…

米国大使館での意見交換会

また、米国大使館からお声がかかった。本国から専門家が来たので、意見交換をしたいということ。専門家のCVは添付されていて、長年政府機関で国家安全保障に携わり、この20年程はサイバーセキュリティを専門としていて、今は某セキュリティ企業に所属してい…

AIタレントのCM初登場

生成AIの登場は、各方面に大きなインパクトを与えた。 ・いよいよAIが人間を超える ・人間の職場がAIに奪われる ・AIを使えるか否かで、人の価値が二極化する といった言説が、紙メディアにもデジタルメディアにも散見されるようになった。かつて、米国の有…