梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

紙幣のセキュリティと事業者の負担

気が付けば、日本の新紙幣発行まであと3ヵ月しかない。現役時代ATMの製品企画・事業企画に携わったことがあり、紙幣切り替え時の苦労について多少は分かる。 ATM等関連機器の開発部署では、発行前から厳重な管理の下で新紙幣サンプルを貸与してもらい、鑑別…

今は100m走に40秒かかるのだが

SF小説は、マイクル・クライトンという作家の登場あたりから、 Science Fiction ⇒ Science Fact に替わってきた。日本語訳だと「空想科学小説から近未来科学小説に替わった」と言ってもいいかもしれない。そしてさらに「近未来」の言葉も消えるかもしれない…

三位一体のリスクマネジメント

先月、NIST(米国国立技術標準研究所)のサイバーセキュリティ・フレームワークの改訂版が発表された。いわゆる「NIST CSF 2.0」である。まずタイトルが、「重要インフラのサイバーセキュリティを改善するためのフレームワーク」から重要インフラの文字が消…

規制では寡占は防げない

生成AIがいろいろな分野で利用されるようになって、その分野に特化したものも登場してきている。一方、AIの急速な発展と利用分野の広がりに対する懸念もあり、規制論も具体化しつつある。代表的なものは欧州委員会の「AI Act」だが、国連もAI兵器規制を考え…

アルゴリズムへの逆風強まる

このところ欧州で、ITシステムに関する批判がいくつか巻き起こっている。典型的なのは、富士通の英国子会社(旧ICL)が納入したポストオフィス向けのシステムで、多くの冤罪被害者が出た事件(*1)。会計システムのバグで、お金の帳尻が合わなくなり横領を疑…

「Grafsec」全国大会

社会全体のサイバーセキュリティ耐性を高めるには、小規模企業や地方の産業での対策強化が必要である。しかし、ヒト・モノ・カネ・情報がふんだんにある大企業/首都圏と違い、当面十分とされる対策も行うのが難しい。そんな状況を改善しようと、10年も前か…

中国ECサイトのリスク

中国で注目の「全人代」が閉幕したが、経済の低迷を受けてかやや変調らしい。最終日に行われる首相のメディア対応も、今回は行われなかった。市民も生活防衛を進めていて、高級品市場が縮小。大きな売り上げを揚げていた日本の化粧品メーカーも、苦戦してい…

AI課税の対象となるのは・・・

昨日に続いてAI関連の話題。AI活用は、ホワイトカラー層の雇用を奪うとされる。ゴールドマン・サックスのトレーダーが、AI導入で600⇒2名になったのがその典型例。放置すればごく一部のAIを駆使できる人と、その他の人の格差が広がると懸念されている。そこ…

生成AI活用現場のリスク

昨年<Open AI社>の生成AI「Chat-GPT4.0」が登場して、一気にAIブームが巻き起こった。あれから1年近く経ち、そろそろ実際に業務に使われるようになって、いくつかの冷静な知見がたまってきたころだと思う。今回、AIのリスク管理を看板にしているベンチャ…

「TikTok」の目に見えるリスク

昨日に続いて、米国の「TikTok」規制のお話。トランプ候補の擁護発言(*1)にもかかわらず、下院では、中国系企業「バイトダンス」に半年以内の売却を命じる規制法案が、352対65の圧倒的多数で可決成立した。まだ上院でどうなるかは分からないが、可決されれ…

他に候補者はいないのですか?

今年は米国の4年に一度の大統領選挙の年だ。通常お祭り騒ぎが年初から、スーパーチューズデーで中間盛り上がりをし、11月の本選挙に向けて広がっていく。しかし、今回は両党とも候補者が決定的になり、当面話題がない。だから人気があるとはいえ、政治家で…

外務省は経済官庁

もう20年以上前のことになるが、ある業界団体の会合に外務省審議官がやってきて時事国際情勢について講演した後の懇談で「産業界のみなさんには知られていないが、実は外務省は(経産省などと同様)経済官庁なのです」と言った。正直驚いて、いろいろ質問し…

古くて新しい問題「内部不正」

昨年後半から、サイバーセキュリティ業界でも「内部不正対策」の議論が聞かれるようになった。同業他社に転職する際に機密情報/顧客情報を持ち出したという案件もあったし、通信キャリアで派遣社員が長期にわたって1,000万件ほどの顧客情報を持ち出した事件…

産業競争力か?安全保障か?

次世代の計算機技術として、期待されているのが<量子コンピュータ>。後述するように計算の単位<Qビット>は純粋にデジタルとは言えないので、デジタル技術の革新とは言いづらい。その入門編的な解説は、下記の書が適当だと思う。 第三次計算機革命 - 新…

「Open WiFi」はやはり危険

サイバー攻撃による情報窃取が頻発していることは周知だが、このところ攻撃側からの情報暴露が目立つ。例えば上海のIT企業「安洵信息有限公司」が、フランスやインドなどにサイバー攻撃を仕掛けたとする内部資料が、インターネット上に流出している。それに…

半導体産業囲い込みの動きか?

先月、半導体ファウンダリ大手のTSMC熊本工場が稼働し始めた。まだ震災から復興途上である熊本県にとっては、地場産業の拡大に向けた朗報である。さらに、第二工場の建設も決まっているという。熊本TSMCだけでなく、このところ関連事業所の新増設が相次いで…

スタートアップ優遇にならず(後編)

「デジタル庁」発足から3年ほどになるが、彼らの努力は買うとしても、前編で述べたようなリテラシーを中央官庁が得るには、10年ほどの時間がかかると思う。さらに、行政機関特有の問題点もある。 民間・民間の取引では、資本主義の原則に従って商談を進める…

スタートアップ優遇にならず(前編)

中央省庁のシステム開発・運用は、かつては<国策SIer>に任せるのが普通だった。それは洋の東西を問わず、英国でもその傾向はあって、国策企業ICLに英国政府システムは多くの発注が流れた。ICLが経営不振に陥った後は、同じIBM互換機メーカーだった富士通が…

AUKUSへの技術参画

国内では非難の声が高い岸田政権だが、外交・安全保障面では着実に成果を挙げていると思う。今回、インド太平洋安全保障枠組みであるAUKUS(*1)に、限定的な技術参画ではあるものの、日本が連携できる可能性が出てきた。 AUKUS、日本と防衛技術協力を検討 …

台湾総統選挙前後の中国

先週の米国(分断)事情に引き続き、今週は中国の政治・外交に詳しい人に話を聞く機会があった。先月の台湾総統選挙は、中国が種々の方法で介入してくるだろうと思われていたが、結果は総統選は与党民進党が勝ったが、議会選挙では与党は第一党にはなれなか…