今月に入って、米国のイエレン財務長官、ドイツのショルツ首相が中国入りし、習主席らと会談をしている。中露vs.欧米というイデオロギー対立は、正直大きな問題ではなく各国共足元の経済をどうするかに着目している証拠だ。会談の目的については、中国からのツナミのような安値輸出への対処を求めたものと思われる。
次世代の産業として、習政権は、
・電気自動車(EV)
に期待をかけ、助成金なども集中的に投下してきた。その甲斐あって、不動産産業が負債にあえいで低迷している中、経済の牽引役になってきた(*1)ものと思われる。ただ、国内市場が冷え込んでいるので、製品は海外に市場を求めて出ていくことになる。これが欧米側から見ると「ツナミ的輸出」に見えるのだ。
例えばEVに関しては、ドイツの自動車産業も苦しんでいるし、米国テスラでは10%人員削減というニュースもある。もともとハイブリッド車に比べ、走行距離が短く、充電スタンドが未整備のところでは使いづらい車である。需要低迷に安値攻勢ときては、欧米のEV産業は困ってしまう。
ただ、中国の側にも(弁護するわけではないが)事情がある。なにしろ大きな国なので、助成金などが付いて「儲かるぞ!」となるとものすごい勢いで参入する企業が現れる。「とにかく作れ、やれ作れ」とばかり増産に拍車をかけたのに、ある時点で「もう抑えめにしましょう」と言って、現場が納得するとは思えない。少なくとも、しばらくの間増産ペースは変わらない。
これは不動産市場で起きたことと同じで、市場など見て作っていないのだ。モノづくり企業にいた私には、生産現場をマネジメントすることの難しさは良く分かる。それができないと経営者の資格はないのだが、中国企業にも適切な経営者は少ないように思う。外圧(例えば関税)で何とかなる問題ではないのだろうが、各国が習政権に圧力をかけ続ける必要はあるだろう。
*1:どこまで信用できるかは分からないが、1~3月期の経済成長率は年率換算5.3%だという