梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

クリアランス制度の適性評価

 先週の<日経ビジネス誌>に、日本でのセキュリティ・クリアランス制度(SC)に関する記事が掲載された。私もコメントを寄せさせてもらっている。

 

日本型セキュリティー・クリアランス、米国は「同等」と認めるか:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

 

 私の主張は、民間人に現行の「特定秘密保護法」に近い制度を適用しようというなら、

 

・民間の個人やその所属する企業にメリットがないといけない

・政府がそれを明示しないと、制度はできても普及しない

 

 というものである。インタビューを受けた後、何人かの有識者からこの制度についての意見を聴いた。自衛隊の幹部だった人は「非常に厳格な適性評価をしている」と言い、一時期米国のSCを取得していた人は「家族や友人についても調べられた。高校生のころまで遡った交友関係に(英語の)ヒアリングが来て、大変だった」と言う。さらに大臣を経験した人によると、

 

    

 

・大臣になったら、機密と思われる情報が多くやってくる

・しかし適性評価をされた記憶はない

・日本の内閣制度では、大臣任命までに十分な適性評価をする時間はとれない

 

 とのこと。大臣に適性評価を求めるなら、大臣希望の政治家は予め評価するくらいにしないといけないとの意見だった。調べてみると、「特定秘密保護法」の適正評価(*1)は、特定有害活動やテロとの関係・犯罪歴・情報扱いの非違の経歴・飲酒や薬物乱用・精神疾患などの評価が課せられている。しかしその対象に、行政機関の長・国務大臣内閣官房副長官・総理大臣補佐官・副大臣政務官らは入っていない。それでも彼らは業務上必要なら、特定秘密に触れることができる。

 

 SC制度の創設をする際に、この適性評価をどうするのか議論をする必要があるだろう。もし民間人にも適用するのなら、その前に政治家の皆さんに(まず隗より始めよで)適用して欲しいものだ。

 

*1:gaiyou.pdf (cas.go.jp)