何度かこのブログでも取り上げてきたセキュリティ・クリアランス(SC)制度の法整備が、ようやく進みそうだ。自民党裏金問題の追及に明け暮れる事態で、能動的サイバー防御(ACD)の法案も通常国会では見送られる(*1)と言われ、SCの法整備も難しいかと思っていた。
しかし先週、ようやくではあるがSC制度の関連法が通常国会に掛けられるとの報道(*2)があった。主旨は、
・法案名は「重要経済安保情報の保護・活用法案」
・特定秘密保護法との2本立て、安全保障に著しい支障を与える情報は同法で扱う
・安全保障に支障を与える情報は、当該法で扱う
・情報漏洩については、懲役5年以下の罰則(特定秘密保護法違反は10年以下)
・(民間人の)適格性調査は、内閣府に専門機関を設置して行う
・調査結果の有効期間は10年間、転職しても有効期間内なら資格は維持される
・(調査等にあたり)基本的人権を侵害しないと明記する
だとある。まず法案名が「保護・活用」となっているのが気になる。民間からすれば政府から提供される情報がどう活用できるかが重要なのだが、政府の立場として民間にどう保護させるかに力点がある語順である。次に、米国が機密情報を3段階に分けて管理している(*3)のに対し2段階にしたことはいいとして、より機微な情報は民間に活用させないという風にも読めるのが問題。本来機密の程度に関わらず、活用・保護の道を考えるべきだ。
また、民間のメリットとして「重要インフラ等のサイバー防御に資する」ことが書かれていないのも気になる。本来産業界が求めていたのは、この点のはず。「それはより機微な情報を含むので、特定秘密保護法で対応します」ということなら、今回の首記法案は、期待外れなものになりかねかいと思う。
*1:政治空白が影を落とす - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)