欧州各国が「デジタル課税」の導入をもくろんでいることを聞いたのは、おそらく5年ほど前。その後、欧州委員会・G7・OECD・G20などの場で議論されていることは知っていて、最近では、
デジタル課税の遅れはいいとして - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)
にあるように、2023年中の条約締結を目指すというところまで遅れていた。その内容は、当初狙いの巨大ITだけでなく、広くグローバル企業全部にかかるようなものだったから、正直遅れてくれてほっとしていた。しかし、いよいよOECDが条約案を出し、2025年発効になりそうだとの記事が出た。
デジタル課税、発効25年に 巨大IT対象―OECD:時事ドットコム (jiji.com)
条約案には、すでに138ヵ国(or地域)が同意しているというから、本当に発効するように思う。ただ、どういう課税方法かというと
・年間売上高が200億ユーロ以上の企業が対象
・対象企業でも利益率10%までは適用せず
・10%を越えた分の利益に関して課税し、サービス利用者のいる国へ配分
するというもの。日本円で売上3兆円を越えるグローバル企業はいくつもあるが、製造業などでは容易に10%の利益は出せないだろうというのが「巨大IT狙い」の線引きというわけだ。巨大IT以外のどんな企業が10%を越える利益を出しているかは寡聞にして知らないが、優良企業には違いあるまい。この「デジタル課税」が発効した場合、優良企業はどうするだろう?
一つの可能性として、これまで以上に将来有望な企業を買収したり、新しい技術への投資をしたとしよう。10%を越える分の利益は(どうせ課税されるならと)そのような投資に回すという意味だ。投資がどう回収できるか不透明なら、短期的には株価が下がり株主に迷惑をかけてしまいかねない。しかし潜在的なその企業の企業価値は、上がっていたかもしれない。
巨大ITらへの課税強化によって、当該企業が積極的に開発投資などを行って次の時代にも市場を独占するようなことにならないか、OECDや各国政府は考えたのだろうか?