梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

自治体等の需要喚起も必要(後編)

 ガバメントクラウドの基準を公表してからまだ1年で、成果はないのかもしれない。しかしそれなら途中経過(*1)くらい公表してもいいように思う。約1,700の自治体があり、それらの業務を数え出したら数万になるかもしれないのだから、少しでも早く検討体制に入ってもらうような情報開示は重要だ。

 

 そのようなものはないかと調べていくと、2年前にデジタル庁の地域情報基盤チームが公表した実証事業の採択資料が出てきた。

 

ガバメントクラウド 先行事業の採択結果について (市町村の基幹業務システム) (cio.go.jp)

 

    

 

 現状自前のシステムで運用している業務を、クラウド環境(*2)の上に移行する実証事業を公募したところ52件の応募があり、そのうち8件を採択したというもの。デジタル庁で予算を付け、当該自治体と事業者で業務システムの移行をさせたのだろう。最初の例、神戸市の住基システム移行については、日立&NECが共同で作業をする。評価として、

 

政令指定都市であり、他の大規模自治体の先行モデルたりうる

・移行する住基システム(&共通基盤)は影響度が高い

 

 ゆえ採択したとのこと。これら8件の実証事業はそろそろ目鼻はついているだろうから、その公表なら可能だと思う。日本の行政には良くあることだが、この資料のように予算を獲るためのものには注力するが、決算については力が入らない。本番を実施するものにとっては、予算・計画だけではなく経過や結果が重要なのに。

 

 引き続きデジタル庁を管掌される河野大臣には、重要インフラのひとつ(*3)である行政システムについて、ガバメントクラウドの供給側整備だけではなく、上記のようなデータの公表を含めた自治体等の需要喚起にも注力いただきたいと考える。

 

*1:どのような業務をどうやってクラウドに移行するつもりか?計画している自治体や応札している事業者は何を苦労(&工夫)しているかなど

*2:この時点では正式なガバメントクラウドではない

*3:ウクライナ政府は、ロシアの侵攻に先立ち行政データを国外に退避させて国の安定を保った