GW直前、急激な円安が市場に衝撃を与えた(*1)。1日で3円ほども下げた結果、1ドル=160円の世界も見えてきている。直接のきっかけは、日銀植田総裁が先月の金融政策決定会合で「現状維持」を決め、
「現下の円安は無視できるか?」
との問いに、シンプルに「はい」と応えたことにある。もう少し何かニュアンスを持たせることはできなかったのかと思うが、しょせんそれは戦術的なミス。「アベノミクス」の強引な円安誘導を是正できない、戦略的なミスに比べれば大した話ではない。
すでに第二の「アジア通貨危機」に入り始めたとする記事(*2)もある。米国FRBが1994年から利上げを繰り返し、アジア通貨が投げ売られる環境を作ったのは、昨年来の現象と似ている。タイなど各国は自国通貨を買い支えようとしたが、事実上「蟷螂の斧」だった。韓国にはIMFが救済に入り、財閥解体など大きな社会変革(多くの市民には重荷)が命じられた。
近年では、2022年の英国トラス政権の失敗が思い出される。市民生活防衛のため、大幅な減税やエネルギー料金高騰対策をしようとしたものの、ポンドが投げ売られ国債が暴落(金利急騰)して、財政拡張はできなかった。
私は金融が専門ではないが、今の日本の状況はこれらと同じことが起きる前兆ではないかと考える。そして15年ほど前、財務省の幹部から聞いた言葉を思い出した。
「IMFの資金にも限界があります。GDP1~2位の米国・日本が倒れた時に、支えるのは不可能です。日本は(放漫財政をすれば)倒れるしかないのです」
というもの。当時と比べ日本はGDP4位まで後退したものの、やはりIMFが援けられる規模を超えていると思う。1,000兆円を超える債務を返済し、少しでも財政健全化に向かわないと円の投げ売りは続き、次には国債が暴落・・・トラス政権と同じ道をたどるのではないか?補選全敗で揺らぐ岸田内閣だが、ここは財政健全化の議論をお願いしたい。
*1:円安進み、一時1ドル158円台 政府・日銀の介入に警戒感高まる | 毎日新聞 (mainichi.jp)
*2:円安無策ニッポン、くすぶり始めた「シン・アジア通貨危機」シナリオ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)