マイナンバーに代表されるシステムトラブルも目立ち、このところ苦戦が続く大手SIerの富士通(株)。その動向について、先週2つの記事が目に留まった。
〈みずほ〉と富士通、システム開発・保守に生成AIを活用する共同実証実験を開始 : 富士通 (fujitsu.com)
「コンサルティングで1万人体制を築く」(富士通社長)(ニュースイッチ) - Yahoo!ニュース
この2点だけを取り上げれば、
・生成AIのプログラミング能力が実用に耐えれば、社内のプログラマーが余る
・余った要員のうち、より高い付加価値を得られるコンサルに転身できる者はさせる
ということだが、IT産業人の宿命とも言うべきものが底流にある。私が経験したIT産業で儲けるコンテンツは、
1)ハードウェア
2)基本、ミドルソフトウェア
4)関連サービス(クラウド、コンサル他)
と変化してきた。
平家物語ではないが「盛者必衰」なのである。私自身も、
・クライアントサーバに侵略されて、メインフレームが売れない
・手作りアプリの受注を、専業ERPベンダーに持っていかれた
・クラウドという恐ろしく安いサービスが出てきて、対抗できない
・競合某社はコンサルと称してお客様に入り込み、受注に活かしている
との営業フロントからの悲鳴を聞いていた。苦悩する事業部門の人達に相談を持ち掛けられて、私が最初に言ったのは、
「技術の進歩が速い業界なので、優位は長く続かない。ひとつだけ真理があるとすれば、事業や個人の生存率はお客様との距離に比例する」
という言葉。上記富士通さんの例でいえば、社内でお客様の(一品料理的)プログラムを書いているのでは、お客様に近いとはいえない。だから淘汰されやすい。一方コンサルタントはお客様の内懐に入り、お客さま間の調和に努める役目。それが果たせれば、ハードウェア・ソフトウェアを買ってもらえなくても、自分自身の調和力で対価をいただけるというわけ。
今後も新しい技術、環境がIT産業に(決してプラスだけではない)変革をもたらすだろう。しかしお客様との距離は、ずっと役に立つ指標だと思う。