梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

AI適用分野、まだ試行錯誤

 今月、何度目かになるのだが「AIの定義」が必要だと述べた。AI規制を先行させている欧州委員会では、OECDと同じ定義をしているのだが、

 

「入力内容から予測や推奨、決定などの出力を生成できる機械ベースのシステム」

 

 なので、やはり広すぎると思う。その定義に基づき、

 

◆禁止されるAI

 ソーシャルスコアリング、職場や教育現場での勘定認識、センシティブな特徴に基づく生体分類、犯罪行動予測や法執行目的の生体認証など

 

◇ハイリスクAI

 入学や採用、生体認証による監視、医療機器などの安全部品、重要な民間・好適サービスの給付、重要インフラでのAI利用など

 

 が規制される。欧州を抜けた英国だからだし、あからさまにAIと言っていないからいいのかもしれないが、英国では顔認証技術を使って万引き犯の摘発(*1)をしている。これは、法執行目的&生体認証による監視そのものだと思う。

 

    

 

 このように規制論がありながら、AI応用分野は広がっている。これは、AI用データセンターが続々新増設されることからも明らかだ。ただ、それも玉石混交である。妥当だし、役に立つのはプログラミングへの適用。

 

米GitHub、コードの脆弱性を発見して自動的に修正するAIツールを発表 - fabcross for エンジニア

 

 単にコード作成の効率化だけでなく「Cybersecurity by AI」の典型例で、どんどん進めていってもらいたい応用分野だ。一方で、是非の判断が難しい分野もある。例えば野球の審判をAIにしたというケース。

 

韓国プロ野球で導入「AI審判」で早々に起きた「ボール」判定を巡る笑えないトラブル|au Webポータルスポーツニュース (auone.jp)

 

 AIの審判結果を人間の審判が宣言するという、ちょっと中途半端な使い方だ。あげく人間が間違えて、その協議をする音声まで漏れてしまったというお粗末さ。韓国野球界の積極性は買うのだが、もう少し抜本的な改革(*2)の中にAIを適用するべきだったのではと思う。まあ、試行錯誤の時期ではあるのだが。

 

*1:英警察の顔認識を用いた「万引き犯」摘発に市民団体が反発 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

*2:人間の審判を全廃、観客に直接判定結果を伝える(AR)などではどうだろうか?