大学教授は産業界から政府を動かせといい、シンクタンク研究員はこういう安全保障環境を知って欲しいと言った。御二人の提案に異論はないのだが、参加者の顔色(当惑?)を見て、一言言っておく必要があると手を挙げた。
・今日はサイバー空間の話だが、それだけ聞いていると「いかにも日本は遅れている」と焦燥だけを産業人は持ちかねない。
・長く日本の「軍隊」は闘う必要がなかった。サイバー戦やインテリ能力以外にも、遅れている分野ばかりである。
との前提を確認した上で、国際環境の変化、特に米国のスタンスの変化(*1)によって「普通の国」になる入り口に立ったから、これからスタートだと述べた。
例に挙げてもらった「防衛省へのサイバー攻撃事案」も、米国の元提督が日本内外に発信した警告を誤解されて混乱を招いている。経団連としては「日本産業界はそれほどひどくない」との情報発信に努めることになったと付け加えた。
卑下せず、誇張せず - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)
その後はサプライチェーンリスクの質問が出ただけで、時間切れ終了となった。産業界から「2027年までの環境整備」を政府に求めることはともかく、日本の現状を産業界も認識するという点ではいい会合だった。
ただ、安全保障の体制整備(*2)については、まだ産業人の認識も参画も不足している。大学・シンクタンクの有識者だけでなく、政府関係者がもっと積極的に産業界に働きかける必要があるだろう。安全保障体制は「これからスタート」と述べたが、その中には官民連携の在り方も入っている。産業人には、デジタルリテラシー、リスクリテラシーに加えて軍事リテラシーも求められるようになってきたことは確かである。それでも2027年に「普通の国」になることは、かなり難しいと思うのだが・・・。
*1:日本に闘う能力を持たせないようにしてきたが、そうも言っていられなくなったので、真剣に「軍事同盟」を考えるようになった。
*2:経済安全保障推進法の実施、セキュリティ・クリアランス制度、重要インフラ防御とインテリジェンス活用、米国との連携内容