また、米国大使館からお声がかかった。本国から専門家が来たので、意見交換をしたいということ。専門家のCVは添付されていて、長年政府機関で国家安全保障に携わり、この20年程はサイバーセキュリティを専門としていて、今は某セキュリティ企業に所属しているとある。どんな話をするかも、誰が出席するかもわからないまま、大使館に向かった。
何度来ても、ここの警備の厳重さには閉口する。少なくとも2度のIDチェック、PCは持ち込みはNGだしスマホと違って預かってもくれない。持ってくるなということ。20分余裕を見て行ったが、入室は結構ギリギリになった。
日本側参加者は、3人の行政官(ただし全員民間任用)、2人の企業人(ただし官僚OG)、記者と私である。奇妙な組み合わせだと思ったが、大使館の広報文化交流部では頻繁にこの種の会合を企画しているという。文化交流担当官補という肩書の人が開会を宣言し、専門家が話し始めた。内容は、
1)サイバー空間での緊張の高まりと、起きていること
2)特に企業が気を付けなくてはいけないこと
3)日米連携のありかた
で、なるべくインタラクティブに進めたいという。1)および2)については異論はなかったので、日本側の状況を話すことにした。
◆貴殿の「サイバーセキュリティは戦略的に捉えよ」には同感。日本の大手企業は、
・技術課題ではなく経営課題と捉え
・地震その他のリスクと並べて経営者のリスクマネジメント対象としている
◆2年前に防衛省のハッキングが疑われた件で、日本の能力が低いとされたことは、
・安全保障のインテリジェンス不足の嫌いはあるが、ITの95%は民間保有
・民間企業のサイバー防御能力は、国際水準から見て決して低くない
・もちろん安全保障系インテリジェンスの活用や中小企業対策など課題は残る
と述べた。3)の件については、
・セキュリティに限らずデジタル政策は、官主導ではうまくいかない
・日米連携では<日米IED>の成果をTPPに反映するなどの実績もある
・今後も官官民民の日米連携強化が重要
とした。専門家からは「我々に何を望むか」と質問されたので、
・米国のセキュリティの専門家が官邸等に出入りする頻度が増えていると聞く
・産業界やシンクタンクなどにも立ち寄り(今日のように)意見交換をして欲しい
と応えた。これは彼に対してというよりは、米国大使館の担当官に言ったつもり。もう少し事前情報や準備期間をくれたら、何人かの関係者を当方で集めることもできたのにとの思いがある。そのような運営を、今後は望みたい。