梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

ロボット・AI導入助成金の適用範囲

 結局は赤字国債を増やすことになる、今回の大型補正予算。「COVID-19」対策として安倍内閣のころケタの違う大型補正を組み、国の借金は増える一方である。加えて補正予算は精査が甘く、不要不急のものが交り込んでくる可能性が高い。ほんの氷山の一角だろうが、会計検査院が22年度予算で「税金の無駄遣い」などと指摘した金額は580億円にも上った。

 

 それなのに、今議論されているのは13兆円余りの補正予算。その中に、このようなものを見つけた。

 

中小企業の人手不足改善に向け 1000億円の支援策 経産省 | NHK | 経済産業省

 

 なるほど、ロボット・AI活用で人手不足解消というストーリー。大きな方向性としては、理解できる。ただし、本当の意味でエッセンシャルワーカーをロボット・AIで代替するには、いくつものステップが必要だ。

 

    

 

 まず中小企業の経営者が、ロボット・AIの導入をする気になるかということ。人手不足解消という問題意識と、ロボット・AIが役立つという認識を持ってもらわないといけない。前者はともかく、後者はイメージはできても具体的な導入手順や効果算定ができるかが課題だ。公的な(例えばIPAの)プロモーションでは一般的なものにならざるを得ず、個別企業の対応は民間コンサル等に頼ることになる。

 

 次に社内で、ロボット・AIの運用が可能な体制をどう作るか。バックヤードのITシステム等とそのオペレーション要員である。要員の教育や採用、そしてベンダーの選択も課題だ。

 

 だから、ロボット・AIそのものの購入費用だけでなく、コンサル費・ITシステム導入運用費・要員の人件費や教育費も、この助成金で賄う必要がある。経産省には、そこまで広げた適用を望みたい。

 

 あとエッセンシャルワーカーは足らなくても、デジタル化でホワイトカラーの人手は余ってくるはず。そのような職種転換(リスキリング!)もこの助成金が充当できるようにしてもらえると、1,000億円の意味があると考える。