梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

日本のサイバー防衛、2027(1)

 この日は、経団連会館でサイバーセキュリティの関連会合。テーマは「安全保障の中のサイバーセキュリティ」で、この分野が専門の大学教授とシンクタンクの上席研究員がゲストスピーカーである。

 

 一般企業では、産業界のサイバーセキュリティ振興や、産業政策としてのセキュリティ官民対話はできても、安全保障が絡むとなかなか意見が言いづらい。それでも30名ほどの人が集まってきた。2人のスピーカーの主張は、2027年(人民解放軍創立100周年)には台湾有事の可能性が高いので、それまでに日本のサイバー防衛力を高めないといけないというもの。

 

 まずサイバーセキュリティの国際連携に詳しい大学教授が、

 

・ロシアのウクライナ侵攻では、2014年以降にあったような電力網への攻撃を注視した

・ロシア依存のインフラから西欧型へのシステム変更があり、大きな被害はなかった

 

 と戦時における、特に電力網や通信網の維持が(他のインフラ以上に)重要であると述べた。

 

        

 

 続いて国家レベルの高度なサイバー攻撃に対処するには、専守防衛では不利で「Active Cyber Defense(ACD)」が必要だとし、攻撃を検知するなどして未然に防ぐ能力を磨くべきと述べた。

 

 3年前の防衛省への攻撃をきっかけに、米国政府が日本政府にサイバー攻撃への対処を求めたことは、おおむね下記の記事に記載した通りだ。

 

普通のサイバーセキュリティ国家 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

 

 台湾有事で日米同盟がこれに巻き込まれるとしたら、その前に、

 

・日本社会は、米国のデジタル基盤をキャッチアップしつつ

・日米同盟強化のため、安全保障・社会保障における国際的な官民連携を実現

 

 すべしという。米国基準(FedRAMP)に沿った政府クラウドをはじめとして、日米間で信頼されるシステムを構築する必要がある。またIntelligence能力を高め、「Five Eyes国」と同等の機密保持能力を持つには、

 

・Data Classification

・Personnnel Security Clearance

・Facirity Security Clearance

 

 を確立する必要があるという。教授は、具体的なアクションとして、

 

1)日米同盟のもと、日米デジタル協定を締結

2)官民連携による、日米デジタルプロジェクトの推進

 

 を掲げた。

 

<続く>