梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

生成AIの人月商売への影響

 「ChatGPT」を始めとする生成AIの得意分野の一つがプログラミング。自分の書いたコード(プログラム)を登録すると自分のプログラマとしての評価が得られるサービス「GitHub」などもあって、インターネット空間に蓄積されたコードの量は測り知れない。それらを参照して「それらしい」プログラムを生成AIは提供してくれるし、デバッグもしてくれるという。

 

 私自身学生時代からプログラムを書くのは好きで、大学院の時初めてプログラムを売った。社会人になってからも2~3年間は、ビジネスとしてプログラムを書いていた。創造する過程はいいとして、悩まされたのはデバッグ。面倒くさかったことだけ覚えている。これを生成AIがやってくれるのなら、とても有難い。

 

    

 

 ただ問題もありそうだ。先週、コンピュータのビジネスの収益源は、

 

・ハードウェア

・ソフトウェア

・SE(人月)

・サービス

 

 と移ってきたと説明したが、今でも個客向けソフトウェア開発やシステムエンジニアの人月商売をしている事業者は多い。今年になって地方を巡ってDX(*1)やセキュリティ事情を聴く機会が多くなったのだが、感じたのは地方のデジタル産業の売上の相当部分が首都圏からの受託で占められていること。大手企業が自前で開発していたものを、地方/海外へ発注することでコストを下げてきた流れである。それが生成AIの登場で、よりコストが安い手段が得られることになろう。

 

 デジタル産業でも下請け企業では、長時間労働が当たり前のところも残っている。生成AIはその解消に役立つとの期待もある一方、プログラマの職場を奪い企業の淘汰を進める公算が高い。

 

 生成AIが提供してくれるコードは、問いかけが正確なら正確に動くものになるだろう。しかしその中にライセンス問題が含まれていないかなどのチェックは必要だ。純粋なコード生成やデバッグの労苦からデジタル人材が解放されて、機能を正しく定義する能力やライセンス等の諸課題をクリアする業務にシフトしていくことが予想される。これを支援することも、リカレント教育といえるだろう。

 

*1:Digital Transformation