梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

AI学習利用規制(北風vs.太陽)

 Web上の記事や画像は、特に制限しない限りは、何人が参照しても構わない。いわば人類の共有財産だ。もちろん、版権元に断りなく剽窃したり変造したりすれば、著作権法などに違反することになる。生成AIが、これらのデータを学習して成長することは、必然の流れだ。

 

 ただ、あまりにも高い能力を示した生成AIについては、種々の権利者(例えば脚本家や俳優)から危惧の声が上がり、規制が求められた。例えばバイデン政権は、AI開発7社と協議して画像生成に関して、透明性と安全性を担保する原則を合意している。

 

AI規制はまずソフトローから - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

 

 今回はメディアから、自社の生成物(画像や記事)をAIに学習させることについての意思表明があった。

 

    

 

 ニューヨークタイムズは、事前の書面による同意なしに、画像や記事をAIに学習させることを禁ずると(改めて)発表した。もともと禁じているが、それを明示したということらしい。いわば北風政策である。

 

米NYタイムズ、AIへの“記事学習”原則禁止 今月3日付で利用規約を変更 - ライブドアニュース (livedoor.com)

 

 一方AP通信は、OpenAI社とすでに連携。積極的に記事を提供して活用の道を探るとしている。いわば太陽政策だ。

 

 NYタイムズの「俺のを勝手に使うな」という気持ちは良く分かる。しかし問題は、AIが学習したことをどうやって検知し、証明するのだろうか?記事の盗作のようなことを露骨にアウトプットすればともかく、参照資料として学習したことの証明は困難だと思う。まさか、AI開発企業や利用企業の内部告発を期待しているとも思えない。だから北風政策には、実効性の面で疑問がわく。

 

 その点太陽政策の方は、限定した開発企業かもしれないが両社の合意の範囲で学習を進め、お互いにとって都合の悪いことをあぶりだしていく機会がある。もちろん、両社の信頼関係は絶対に必要だが。

 

 2つのメディアの対照的な動き、他の業界への波及も含めて、注目していく必要があるだろう。