梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

QUADでの次世代インフラ論(後編)

 ローカル5Gは、工場内のような閉じた場で、教育・訓練・シミュレーション等に役立つことは分かっている。しかし広域5Gはどうなのだろうか、私は高速道路や主要道路での自動運転が一番近いキラーアプリケーションだと思っているが、確信はまだない。昨今の状況を見ていると、多種多様なドローンの制御というのもありそうだ。それよりずっと速くなる6Gのキラーアプリは何になるのか、これからこの点を議論していくべきだろう。

 

 もうひとつ気になったのは、登壇した全ての人が一度は口にした「安全な通信環境」という言葉。Securityを意識してもらうのは嬉しいのだが、インフラレベルのSecurityでは十分ではないのが現状だ。つまり「通信は常につながっていて、万一途切れても迅速に復旧、もしくは迂回接続できる」というだけでは困るのだ。

 

    

 

 「何でもつながる、いつでもつながる」を技術者が追求した結果、悪人もつながってきてしまった。その責任をプロバイダーやサービサーにだけ負わせるのではなく、通信インフラのレベルから考え直してもらえないかというのが、私の希望。

 

 ひとつの可能性として、6Gなら「Trusted Web」を実現できるという検討は出来ないものだろうか。悪人も含めて匿名でつながってくるインターネットは、5Gまでで打ち止め。6G以降は身元のはっきりした透明性の高い個人や企業だけがつながり、正々堂々と取引し、情報交換し、議論をする・・・場になる。

 

 個人や企業の認証の(破られにくい)技術、それを裏付けする(国際的)法整備、法規に至らないルール(ソフトロー)、利用者に対するリテラシー教育など、やるべきことは多岐にわたる。単純に6Gと「Trusted Web」をバンドルすればいいというものではない。また「匿名がいいな」と思う人、ちょっと後ろ暗いことのある団体などは、透明性の高い世界を嫌って反対表明をするかもしれない。

 

 ではどうするか。少なくともインフラのSecurityに留まらない、アプリケーションまで含めたSecurityの議論をさせてもらいたいものである。