梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

「会社は誰のものか」論争

 欧州各国では、ストライキが頻発している。原因は物価高と行政サービスの低下、賃金が(思ったほど)上がらないこと、社会福祉の切下げ、国民負担の増加などさまざまだが、一般市民の不満がかつてないほど高まっていることは間違いがない。これを受けて、富裕層や大企業の課税強化を訴える識者は多い。例えば、

 

ピケティも称賛する若き経済学者が提唱─従業員に権力を与える「職場の民主主義」とは | いまの企業は「慈悲のある独裁状態」だ | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

 

 英国気鋭の経済学者ダニエル・チャンドラー氏は「英国企業のほとんどは、慈悲のある独裁体制」にあると経営姿勢を批判する。これを読んで、改めて「会社は誰のものか」論争を思い出した。

 

        

 

 私が伝統ある日本の大企業に就職したころ、その企業はウェットな家族体質を色濃く持っていた。新入社員の私はその事業所の持ち物で、

 

・若いうちは身を粉にして働け、給料の安い分40歳過ぎてからは「貯金」で食える

・能力や希望に関わらず、与えられた仕事(だけ)に注力せよ。悪いようにはしない

 

 と刷り込まれた。「会社は誰のものか」の問いに上司たちは「従業員皆のものだ。だから迷惑をかけるな」と応えた。

 

「おかしいな、経済学の書には、株式会社は株主のものと書いてあるのに」

 

と反論すると「お前はまだ若い」といなされてしまった。後になって、この書にあるように、日本の伝統的な企業はゲゼルシャフトの状態のまま近代を迎えていたことを知った。

 

ゲゼルシャフトが残る日本 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 その企業の株主の半数近くは、すでに外国人や機関投資家だった。その圧力で徐々に改革は進んでいく。リーマンショックで大きな赤字を出した後、経営層が入れ替わって改革は一気に進んだ。今は(儲けるという)目的をもって集まった役員・従業員によるゲマインシャフト色が強い。そうでなかったら、私が40年以上勤務することなどできなかっただろう。

 

 獰猛なとあだ名されることもある米国流の資本主義に、欠点がないわけではない。しかし、経済成長をしやすい環境であることは確かだ。英国企業もゲマインシャフトとして統治はするが、ゲゼルシャフト的な慈悲も少しはもっているというなら、問題はないように思うのだが。