この日はいつ雨が降りだすか分からない空模様の下、六本木のグランド・ハイアットにやってきた。ほんの1週間前に、知り合いの米国法律事務所の人から、イベントの案内があったからだ。それは「Fourth QUAD Open RAN Forum」という会合。主催は、Open RAN Policy Coalition(多国籍の通信関連企業集団)で、経団連も協賛しているイベントである。
QUADは政府間連携スキームだから、各国政府関係者も挨拶をしたり、パネルディスカッションに参加する。ここでのテーマは「Beyond5G」で、要するに6Gの開発や普及に向けた国際連携をしようということ。日本政府は外務省や経産省も関係するものの、中心は総務省である。
経団連として挨拶に立った人は、デジタルエコノミー委員会の企画部会長。その後のパネルディスカッションにも、多くの知り合いが登壇し持論を述べた。総務省はじめ通信業界の、特に開発系の人達には「5Gの失敗を繰り返すまい、取り返したい」意識がある。4Gに比べて10倍以上速く、多くの端末を接続でき、遅延も1/10以下という5Gは、技術開発を先行させながら、普及段階で中国勢に先を越された。
だから中国包囲網的性格を持つQUADの場で、4ヵ国で連携した次世代通信インフラの議論をしようというのは当然のことだ。だが、スピーチやパネルディスカッションの議論を聞いていて、ちょっと物足りないものを感じた。理由は2つある。
ひとつは、アプリケーションの話がほとんど出てこないこと。技術・開発・仕様などはもちろん重要なのだが、6Gは何に使えるのか、5Gでできない何が出来るようになるのかが(仮説でもいいから)聞きたかったのだ。別ブログで紹介したように5Gのキラーアプリケーションでさえ、まだ検討されている段階なのだから。
5G、それで何ができるのか? - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
<続く>
QUAD:日米豪印4ヵ国の「自由や民主主義、法の支配といった基本的価値を共有する」政治的枠組み
RAN:Radio Access Network