先週「Fourth QUAD Open RAN Forum」に参加して、そこでの「Beyond5G」つまり6G関連の議論について注文をつける記事を書いた。開発や設備投資を先行させても、キラーアプリケーションが育たなければ、後発国に追い越されるし普及もしない。5Gでは中国の後塵を拝した日米の業界が6Gで巻き返したいなら「6Gでしかできないキラーアプリを議論せよ」と申し上げた。
5Gで中国が先行できたのは、政府の後押しもあってHuaweiらの企業が先行投資をしたから、米国は米軍での利用もにらんでそれを追っている。私は、日本がそれに加わるなら、例えば自動運転やドローン制御などの広域5Gを活かせるアプリ開発が必要と、ことあるごとに主張はしていた。
ところが先行しているはずの中国でも、5Gのキラーアプリに悩んでいるとの記事を見つけた。
中国の通信事業者「5Gの恩恵」期待外れの実態 キラーアプリなく、収益アップの貢献わずか | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
先行して設備投資はしたものの利用が伸びていないという内容で、中国工程院のメンバーが付加価値不足を指摘している。そこまでは納得なのだが、その打開策が5.5Gというのには驚いた。5Gが使いきれないのにより性能を上げた5.5Gを何に使うつもりなのか。
数年前からその兆候はあったのだが、習政権は2年ほど前からあからさまにデジタル産業を叩いてきた。Huaweiのような製造業・基盤産業ではなく、アリババのようなアプリ産業が主なターゲット。この政策は国内の格差是正の意味があって、直近では一般市民に賛同されたかもしれない。しかし、中長期的には経済成長にマイナスだ。
中国でもこれほど携帯電話やSNS、動画関連アプリが普及したのは、4Gの性能があってこそ。だから先行してしまった5Gインフラを活用するには、アプリ産業を励起しなくてはならないのに、逆をやっていたということ。
習政権にキラーアプリが足りませんと言えば、官製キラーアプリを考えるだろう。何が出てくるかは分からないが、少なくとも官製アプリではイノベーションは起こせないことは予言しておきたい。