先週末、ある程度予想していた記事が出た。報じたのは朝日新聞が最初だった。その後NHKのTVニュースでも同様の内容が伝えられている。
「通信の秘密の保護」に制限検討 サイバー攻撃への対処、政府が強化 [岸田政権]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
憲法21条「通信の秘密」。デジタル技術の急速な発展により、SIGINTによる情報収集の重要性が増している。しかしこの条項があるので、日本ではSIGINTが制約されるとした安全保障関係者の声は以前からある。今年意見交換した総務省の元幹部は、
通信の秘密を巡る難問 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)
で紹介したように具体的な法律名を含めて問題点を教えてくれ、防衛3文書改訂など「能動的サイバー防御:Active Cyber Defence(ACD)」を求められるが、後輩たちは防衛3文書らと上記の法律群の板挟みになって苦しんでいるだろうと言っていた。
彼の現役時代には、警察関係者から通信ログの提供などを求められても「令状を取ってきてください」と応えるだけだったが、これからはそうもいかないだろうと言う。ただ、総務省系の研究機関である情報通信研究機構(NICT)が、巷にあふれるIoT機器の脆弱性を調査したことはある。
Active Defenceの障害(後編) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)
この時点では、不正アクセス禁止法の改訂が必要と述べたのだが、やはりNICTを同法の例外にしたという。こういうことが増えていくのだろうが、デジタル社会を廻していくためのデータの多くは、民間企業にある。これに政府がどれだけ手を伸ばせるか「Government Access」の議論が国際的にもHOTになっている。
日本でも、経済安全保障推進法の施行にあたり、民間データを政府が徴求する場面が増えそうだ。同法の具体像はまだ見えないが、総務省が管轄するキャリア等への電気通信事業法は、その先行例たり得る。その改正等の動きについて、注目しておきたい。