いわゆる「フェイクニュース」が続々現れ、デジタルメディアを通じて世界中に拡散してゆく。単なる言葉の「嘘」でも、社会に大きな影響を与えることがあるのに、今はより信じられやすい映像の形で広がっていくのが恐ろしい。
かつてボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の折、米軍の介入を促したのは、戦渦に巻き込まれる人が「誰か来て!」と叫ぶ映像だった。しかし、後日その映像はスタジオで俳優を使って撮影されたものだとの説が流れた。それが事実だったかどうかは別にして、映像作成の技術は当時より進化し、より自由で安価な映像作成が可能になっている。
TVドラマの撮影に関する特典映像(*1)では、例えばアフガニスタンの小集落はカリフォルニアの乾燥地帯に作ったセットだったことがわかり、素人目には判別できない。さすがにアラモアナ通りに小型ジェットが降りるシーンはCGだと分かるが・・・。
映像をさらに巧みに創りあげる生成AIの登場で、フェイク画像作成のためのコストは劇的に下がった。ウクライナ戦争初期、自ら辞任し兵に銃を置くように勧めたゼレンスキー大統領のフェイク画像はまだ稚拙だったが、今はもっと見分けのつかないものもネット上に溢れている。
そんな中、重要性を増しているのが「ファクトチェック機関」。日本にも「日本ファクトチェックセンター」という非営利組織があり、日々ニュース等の真偽を判定し結果をサイトに載せている。例えば、
「(動画)イスラエル空軍がガザに白リン弾を投下した映像」は誤り【ファクトチェック】|日本ファクトチェックセンター(JFC) (factcheckcenter.jp)
では、私自身も白リン弾が使われたと思っていたから、とても参考になった。このような機関は、何かに拠るとフェアな行動が出来ないので中立・独立が基本。それゆえ資金集めなどが難しいのだが、極めて重要な社会インフラとなりつつある。
JFCならびに関係者の努力に敬意を表しながら、もっと市民に関心をもってもらわないといけないと思う。この記事の最後に、
「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。
とある。俗に「悪貨は良貨を駆逐する」というが、これは情報でも同じ。良い情報は駆逐されやすく、社会全体がこれを貴重に思い利用する努力が求められる。
*1:NCISやHawaii-5O