梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

人間関係とテクノロジー

 勧めてくれる人がいて「The Good Life」という本を読んだ。およそ1世紀にわたり、総勢1,300名超の人生をトレースし、膨大なアンケート結果の蓄積を基にした「幸福の科学」である。

 

ハーバード成人発達研究の成果 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 結論は、良い人間関係が充実した毎日をもたらし、健康・長寿・繁栄に繋がるというもの。「友達は何歳でも作れる。幸福になるのに遅すぎることは無い」と締めくくられていた。デジタルテックには厳しい評価があって、SNSやテレワークは本当のコミュニケーションではないとされてしまった。

 

 私としては、研究期間1世紀の中でインターネット時代は1/5ほどなので、まだ評価を下すには早いと申しあげたい。

 

    

 

 コミュニケーション(人間関係)とテクノロジーの関係については、本書だけでなく厳しい見方も多い。SNS上の誹謗中傷は収まらず、自殺に追い込まれる人もいる。生成AIの登場も、より深刻な事案をもたらすようになった。

 

・AIと会話するうち、エリザベス女王を暗殺する気になって逮捕された男

・気候変動問題をAIと語らいあううちに、悲観して自殺した男

 

 などである。しかしこういう悲劇は報道されやすいが、その陰にSNSや生成AIで癒された事例は数多くあると思う。メディアは取り上げないかもしれないが、何らかの手段で統計値を算出できないものだろうか?「いいね」の数のように、簡易・単純なものではなく・・・。

 

 上記のハーバード成人発達研究は、アンケートなどのアナログ手段で「幸福」を測った。一方で、市民の意識をセンスして、政治の方向性を決める提案(22世紀の民主主義*1)もあった。この書には、センスの仕組みについての言及はないが、その仕組みがあれば「幸福」を測ることができるはず。そんな仕組み(テクノロジー)の開発は、技術者として挑戦し甲斐のあるテーマだと思う。

 

*1:無意識データ民主主義の提案 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)