防衛安保関連三文書改訂がなって、1年が経った。8つの項目について、防衛力強化が謳われたのだが、1年間に実効を上げた分野と停滞している分野があるという。
反撃能力の整備加速 課題先送り、政権弱体化が影―安保3文書1年:時事ドットコム (jiji.com)
個別分野ごとに見ていくと、このような状況。
1)反撃能力
長射程ミサイル配備を、25年度に1年前倒し
2)弾薬庫整備
大分などで工事着手、南西諸島でも増設へ
3)民間空港活用
4)同志国協力
英豪と訓練円滑化協定が発効、日米豪比の共同訓練開始
5)防衛産業
宇宙・電磁波分野のスタートアップの参入促進、展示会増加
6)装備品移転
進むものの、次期戦闘機の第三国移転解禁などは論点先送り
7)防衛費財源
増税開始時期1年後ろ倒し?なお時期は不透明
8)サイバー
能動的サイバー防御(ACD)の法整備は24年度通常国会は見送り
防衛省や民間(産業、スタートアップ等)がやるべきことは、進んでいるように見える。では、どこが遅れているかというと、大きな世論を形成しないといけない分野。増税のことはもちろんだが、戦闘機輸出というセンシティブなことと、サイバー分野だ。
結局政治が議論を尽くし、メディアを通じて国民世論を形成する努力が不十分なことが「遅れ」を生んでいると思われる。直近に起きた自民党裏金問題で揺れているからというのは、言い訳にならない。それ以前から議論は、見えていないからだ。
サイバー分野については、憲法21条「通信の秘密」で制約されている通信傍受等の情報収集能力向上と、セキュリティ・クリランス制度などで民間人含めて情報保持を求める2面があり、これらが混同されて伝えられている(*1)と思う。このように根本的なことで誤解があっては、世論の形成など不可能だ。
政治的混乱はあっても、やるべきこと・議論すべきこと・それを有権者に示すことを怠って欲しくはないと考える。
*1:Cyber Initiative Tokyo 2023(第二日) - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)