「核兵器よりも人類の脅威になるかも」と考えられ始めたのがAI兵器。特に自律型致死兵器システム(LAWS)の規制については、国連のグテーレス事務総長が今年末までに専門機関を設立し、2026年ころには法的拘束力のある「AI兵器禁止規定」を安保理で取りまとめたいと今年発表した。米国もこれに先んじる形で、やや緩いと批判もされる内容ではあるが規制案を提案している(*1)。
LAWS規制論はグテーレス発言が始まりではなく、2013年に国際NGOが「殺人ロボット阻止キャンペーン」を行ったのが最初。その後特定通常兵器使用禁止条約(CCW)の場で議論が進んでいる。その内容や日本政府の対応については、外務省が今年5月に発表した資料がわかりやすい。
自律型致死兵器システム(LAWS)について|外務省 (mofa.go.jp)
主要な論点の筆頭に「LAWSの定義」が挙げられているのは、兵器ではないもののAI規制の論点と同じ。これはLAWSではないと言われたら、ちゃんとした定義なしにどうやって証明するのか?今後最大の争点だと思う。この資料の中で「日本国としてはLAWSは使わない」との宣言をしていることは評価できる。つまり、
・完全自律型致死性兵器の開発意図はない
・国内法、国際法が禁じる装備品を研究開発することもない
と明記してあるのだ。ところが、防衛装備庁が今年の技術シンポジウムで困った発表をしていたことが分かった。
もはやSF? 防衛省が描く「未来の海戦」とは 海上自衛隊に宇宙船みたいな兵器も | 乗りものニュース (trafficnews.jp)
記事の見出しにあるように、まさにSFの世界。きたるべき海戦は、無人機やセンサーと従来型の有人システムがネットワーク化された戦いだとある。そこでは、
・長期運用型UUV
・戦闘支援型多目的USV
が投入されるという。確かに致死兵器とは書いていないが、UUVなどは核兵器を搭載して回遊させておけば「コストの安い戦略原潜」へと転用できるはずだ。
防衛省が国内のファンを増やそうと「戦争ヲタクたち」にサービスするのはわかる。しかし、これは日本国としての重要なスタンスを貶めかねない発表だったと思う。「いやいや、致死性兵器(LAWS)とはどこにも書いていませんよ」と仰るかもしれないが、上記のようにLAWSの定義は容易に定まらないもの。ブービートラップや地雷だって、誰に命令されなくても人間を殺傷するからLAWSにされてしまうかもしれないのだ。
今の段階ではR&Dはともかく、発表内容は精査された方がよろしいと思う。