梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

「年賀を飛ばす」覚悟で(2)

 郵便局ネットワークは、郵便貯金や簡易保険など金融事業も大きくなっていたから、他の金融機関と同等のITシステムや窓口機器を備えるようになっていた。ピーク時20万台ほどもあった国内ATMだが、全体が減り続けても日本郵政のATM保有数は最大級である。

 

 加えて、金融機関などではお目にかからない巨大な自動機も導入している。それが郵便区分機(*1)。ハガキ、封書などの定型郵便物を仕分けする機器(というより設備)で、大型のものは全長20mにもなる。郵便番号やあて名をOCRで読み取り、宛先のボックスに自動搬送する機能がある。非常に高速で搬送でき、通常3~4万通/時、年賀状専用モードでは5万通/時の処理能力がある。

 

        

 

 この機器は、1998年の郵便番号変更(3~5ケタから7ケタ)に伴って、現在の仕様に改訂された。この仕様変更は、○○県○○市○○町までの住所を全て7ケタの郵便番号で表記するために行われた。だから、現在は郵便番号さえ書けば、宛名欄は〇丁目〇番〇号を書けば、市町村表記は不要なのだ。

 

 さらに、郵便局員が配達するルートに合わせて郵便物を、この機器が自動的に並べてくれる機能がある。それまで配達する郵便物をまとめて受け取り、自分の配達ルートに並べ直す手作業を不要にしたのだ。ことほどさように<全逓>労働者への配慮をしていたと考えることもできよう。

 

 この新型郵便区分機についても、年賀の特別仕様は要求された。上記のように5万通/時の処理能力に加えて、1日の内23時間半以上稼働できることが求められた。それほどに(当時の)年賀状需要は大きかったのだ。

 

 「年賀は文化」なので、これを止めることはあってはならない。それゆえ、郵便局ネットワークには特別な仕様が求められていたことが分かるだろう。区分機を例にとっても、通常使用時の倍近い性能、故障に瞬時に対応できる監視・保守体制、これらは当然機器導入や運用のコストに跳ね返ってくる。

 

<続く>

 

*1:郵便区分機 - Wikiwand