梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

世界の10大リスク2024(WEF)

 昨日に続いて「世界の10大リスク」。ダボス会議が今週行われたが、WEFもこれを公表していることを関係者に教えてもらった。世界の名だたる経営者が集まる会合だから、軍事関係者ではなくグローバル企業の経営者向けのリスク分析だ。当面2年間と、中期10年間のリスクが別々に示されている。

 

◆2年間

1位 Misinformation and disinformation

2位 Extreme weather events

3位 Societal polarization

4位 Cyber insecurity

5位 Interstate armed conflict

6位 Lack of economic opportunity

7位 Inflation

8位 Involuntary migration

9位 Economic downturn

10位 Pollution

 

◆10年間

1位 Extreme weather events

2位 Critical change to Earth systems

3位 Biodiversity loss and ecosystem collapse

4位 Natural resource shortages

5位 Misinformation and disinformation

6位 Adverse outcomes of AI technologies

7位 Involuntary migration

8位 Cyber insecurity

9位 Societal polarization

10位 Pollution

 

        

 

 こちらは随分趣きが違う。ウクライナや中東の紛争を見ているのに、国家間武力(armed)紛争が今後2年の5位どまり。10年後では消えてしまっている。情報リスクが2年の首位、10年でも5位につけているのは、人間同士の紛争で最大のものは情報リスクだということだ。サイバーリスク(insecurity)も、4~8位としっかり残っている。AIの弊害(Adverse outcomes)は、10年のスパンでリスクに登場する。

 

 押しなべて見ると、当面は国家間の武力紛争が起きるが、10年後にはおおむね平和なリアル社会になっている。しかしサイバー空間でのリスクは存在し続けるし、AIの暴走(?)も怖い。ただ10年スパンでは環境問題が最大の(世界経済への)リスクだ・・・ということになる。

 

 ユーラシアGのリスク発表を見て、イアン・ブレマーが珍しくうつむき加減だと言った人がいた。世界中で勃発する紛争、ひょっとしたら大量破壊兵器が使われるかもしれない。しかしWEFの経済人たちは「軍事紛争で多少死人が出ても、中長期では世界経済は成長を続ける。環境問題さえ解決すれば」と言っているのかもしれない。