梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

国際会議「AI Safety Summit」

 先週、英国で「AI Safety Summit」が開催された。ウクライナ紛争・中東危機・台湾海峡の緊張などで、グローバリズムは終わったと言う有識者もいるが、国境のないサイバー空間が経済社会に占める比重が飛躍的に増えていて、国境を閉ざすことの意味は小さくなってゆく。そのため、AIのような大きな期待と課題を抱える案件については、開かれていて、かつフラットな議論の場が必須である。

 

 「落日の大国」である英国だが、この種のことには抜け目がない。まず英国で開催した国際会議を、各国で持ち回りするよう提案し「創業者プレゼンス」を得るのだ。10年前から始まった、サイバーセキュリティに関する官民会合も提唱者は英国のヘイグ(当時)外相。私自身も、何度目かのハーグでの会合に参加している。

 

        

 

 バイデン大統領が「AIの安全性評価のための大統領令」を出しているし、欧州委員会の「AI Act」の議論も盛んだ。日本も、G7で提唱した「広島AIプロセス」を推進しようとしている。そんな中、この会議の特徴は、

 

・高性能の先端的AIが対象

・各国研究者の情報共有の場を設定

・その具体的な枠組みはIPCC(*1)を参考に

 

 となっている。英国にはいくつかのAI開発拠点があるが、英国がAI技術開発で主導権を狙うというものではなさそうだ。どちらかというと、利用技術に拠った産業振興をもくろんでいるのではないか。実際研究者の中には「先端的な研究は、いつ制御できなくなりかのリスクがある」とする声もあって、企業や国といった枠組みを越えた意見交換は必要だ。

 

 「2024年にも新たな(高性能)AIが登場してリスクが顕在化する前に・・・」とする有識者もいて、今後半年ピッチで開催するスケジュール感。次回は韓国、次々回はフランスでの開催が予定されている。AIに限らずデジタル政策は、行政からの押し付けではうまくいかない。AIの活用と規制のバランスこそ、国際的な官民連携で推進すべき政策課題である。

 

*1:国連の気候変動に関する政府間パネル