今年もイアン・ブレマー<ユーラシアグループ>が、世界の10大リスクを公表(*1)した。
1位 米国の分断
2位 瀬戸際の中東
3位 ウクライナの事実上の割譲
4位 AIのガバナンスの欠如
5位 ならず者国家の枢軸
6位 経済回復できない中国
7位 重要鉱物の争奪
8位 インフレの足かせ
9位 エルニーニョ再来
10位 米国でのリスキーなビジネス
2021年には、5位に「国際的なデータ規制強化」、6位に「サイバー紛争の激化」が入っていたのだが、もう2022年にはこれらの項目は消えてしまっていた。デジタル系で残ったのは、2位の「GAFAら巨大ITの支配」だけだった。
さらに2023年(*2)にはそれも消え、代わりと言っては何だが2位に「人工知能(AI)」が入っていた。今年も4位に「AIのガバナンス欠如」は入っているが、巨大ITやデータ規制、サイバーセキュリティは戻ってこなかった。ひょっとすると10位の「米国のリスキーなビジネス」に含まれているかもしれないが・・・。
こうして4年間のリスク分析をデジタルリスクの視点で見てみると、国レベルのデータ囲い込み(争奪)や、サイバー攻撃のような見えないリスクではなく、リアル空間での物理的な殴り合いや人権侵害が常態化したり差し迫った(*3)ことが分かる。おそらくデータ&サイバー領域での闘いは、しっかり実世界のコンフリクトに組み込まれてしまったのだろう。唯一残った「AI」にしても、ガバナンスが効かず暴走するAI(兵器)が含まれるのだろう。
私の専門領域ではないが、環境問題やパンデミックのリスクも、消えたり相対的にランクを下げた。デジタル政策に限らず、リアルな戦争の前には「そんなこと言ってられない」と軽視されるようになったに違いない。それでも私たちは、データ&サイバーのリスク(&機会)を訴え続けるのだが・・・。
*1:「米大統領選」がトップ 24年の10大リスク―米調査会社:時事ドットコム (jiji.com)