梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

幼児教育は、言葉をたっぷり

 AIの先端研究者のインタビュー番組をいくつか見た。参考になったのは、次のようなフレーズ。

 

・Chat-GPTに代表される生成AIの基本は、大規模言語モデルである

・単純に言うと、言語の列を見て、次の言葉(単語)を予測するもの

・それまでのAIは、言語の列(意味)を十分認識しないので、予測精度が低い

・大規模言語モデルとなって、意味を(表面的にかもしれないが)理解し始めた

・意味が分かるようになると、AIを「心を持つこと」に近づけられる

・ただし、人間の脳が消費するのとは数桁違うエネルギーを使ってしまう

 

 特に面白かったのは、「心とは、言語が積み重なったもの」だと、AI研究者たちが思っている事実だ。だから<AI心理学>という新しい学問ジャンルが出来たのだという。そしてより高性能のAIとするために、つまり「心」を豊かにするために、大量の言語を学習させていく。あたかも幼児に言葉を教えていくように・・・。

 

    

 

 昔、初等中等教育のメニューについて議論していた時、英語教育をいつの時点で始めたらいいかが論点になった。ある教師は「可能な限り早い方がいい。その方が上達が早い」というが、他の識者は「まず日本語で十分議論ができるようになってから英語に取り組みべし。そうでないと英語は話せても、中身のない言葉を発するだけになる」といった。私自身は、後者の意見に近い。

 

 大規模言語モデルは「心」だとの説を聞いて、やはり(日本語でいいから)まず言語モデルを幼児期に確立させるべきだと思った。歩けないうちから話しかけ、座れるようになったら本を持たせ、なるべく声に出して読ませる。こうして日本語言語モデル(≒心)が形成されて、初等中等教育に入っていく。言語モデルができていれば、その時点で英語教育を開始するのは構わない。

 

 つまり幼児期の言語習得が、その後の学習能力を向上させ、結果として優れた知能をはぐくむという理屈である。AIを育てることを参考に、人間を育てるやり方を考えてみたのだが、どなたか教育関係の方に評価してもらえたらと思う。