生成AIがいろいろな分野で利用されるようになって、その分野に特化したものも登場してきている。一方、AIの急速な発展と利用分野の広がりに対する懸念もあり、規制論も具体化しつつある。代表的なものは欧州委員会の「AI Act」だが、国連もAI兵器規制を考え始めたし、「核兵器の管理をAIに委ねてはいけない」など具体論も盛んだ。そんな中、大阪でのシンポジウムで「生成AIの規制」が議論されたとの報道があった。
生成AI開発の寡占回避へ 複数の規制で網掛け - 日本経済新聞 (nikkei.com)
いかにも規制強化を急げと言いたげなタイトルだが、確かに「適正な競争環境をつくるための規制」を論じている人もいる一方、早期の規制には反対との意見もある。私自身は後者の意見に近い。
特に寡占を防ぐための規制というのは、考え方が間違っていると思う。例えば<WIRED>の初代編集長ケヴィン・ケリー氏は、GAFAを例に「規制すればするほどGAFAを代替する勢力の伸長を抑え、GAFA独占を長持ちさせる*1」と言っている。
生成AI規制について、もう少し詳しく説明すると、
・生成AIのエンジン部分に善悪はないので、規制は難しい
・応用分野(アプリ)やアプリに資するツール(ミドル)等を規制することになる
・したがって先行した(寡占)各社ではなく、これらを追う新興勢力だけが規制される
ので、先行各社の寡占状態が堅持されてしまうのだ。規制しなければ、エンジン部分で先行した企業よりも、アプリ分野・ミドル分野で市場を広げた企業が市場に影響力を持てるのだが、それらを規制で縛ってしまえばエンジン部分の市場優位性が保たれるというわけ。
「AI発核戦争」のような極端な例を除けば、AI規制は急ぐべきではないし、ましてや寡占対策にはならないことを各国政府は理解して欲しいものだ。