先週、巨大ITと称せられる5社の2023年10~12月期の決算発表(*1)があった。各社増収、増益で、日経紙は「巨大IT再点火」と見出しを付けていた。改めて、アマゾンの売上高約1,700億ドル(前年同期比14%増)というのはとんでもない値だと思う。年間に直せば、100兆円に届きそうな額である。2番目に多いのは、アップルの約1,200億ドルという売上高だが、こちらは前年同期比2%増に留まった。他の3社も10%以上の売り上げ増で、メタは25%も伸ばしている。
その結果、この5社の内ではアップルだけが株価を下げた(*2)。決算が他社に及ばなかった原因は、やはり中国市場の不振だという。中国全体の景気が良くない上に、主力商品「iPhone」が中国市場で売りにくくなったためだろう。
株式市場は、決算だけを見ているわけではない。どちらかというと、半年先の決算を予想して変動する。過去の決算は、その予想を確認する指標のひとつにすぎない。中国市場を逃げ出したマネーは、日本市場も潤しているが、やはり巨大ITはねらい目。株価が上がって当たり前なのに、アップルだけは嫌われている。今回アップルの株価が下がったのは、中国・ハードウェア依存が他社より大きいからだと思う。
そして私が推測するに、もうひとつ要因がある。それは、AIに関する情報発信が少ないこと(*3)。とにかく今は「AI開発・AI利用拡大」というだけで市場が好感を持つ状況だ。本当にどう回収できるかわからない投資(のブラックホール)なのがAIの現状なのだが。欧州などはAI規制を強化しつつあるし、危惧する世論も少なくない。
それでも、先行きの業績や株価のためには「AI」を連呼する方が有利なのだろう。開発中の案件について絶対の秘密主義を貫くアップルのクックCEOも、ついに「年内には取組んでいることの詳細をお知らせできる」と言い始めた。さて、何がいつ出てくるのか?そして市場の反応は?
*1:巨大IT、再点火 5社そろい増収増益 10~12月、メタとアルファベットは最高益 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
*2:予想を上回った決算だったが、発表後の夜間取引で、2.9%下げた。