先週、米国東海岸カリフォルニア州は大忙しだった。APECの首脳会合が開かれたが、それに合わせた日程で、多くの外交交渉が持たれたからだ。世界が最も注目したのは、1年ぶりの米中首脳会談。東欧や中東で紛争が激化していて、南シナ海や台湾海峡の緊張も高まっている。もしものことがあれば、WWⅢになってしまうかもしれない情勢で、両大国首脳がどのような会談をするかは非常に重要なことだった。
結果は、私たち経済人を少しは安堵させてくれるものだった。焦点とする意見もあった台湾問題では平行線だったが、両国の軍同士のチャネルが再開され、首脳同士のコミュニケーションも強化された。半導体などの禁輸措置の緩和が無くても、習首席が笑顔で会談を終え中国メディアがいちはやく(米国より前に)結果を報道したことは、緊張緩和を顕している。もちろん、両国とも国内外に大きな課題を抱え、争っている場合ではない。
日中、日韓首脳会談はじめ、多くの首脳外交があった。それらを全部合わせて、安全保障分野では一息つける内容だったと思う。しかし、私がもうひとつ注目していたIPEF(インド太平洋経済枠組み)は、期待外れの結果に終わっている。この協定には、貿易・サプライチェーン・クリーン経済・公正な経済の4つの柱があり、
「中国を外しても成り立つサプライチェーンの確立」
については、すでに5月に妥結していた。今回は残る3項目が議論されたのだが、
「脱炭素に向けた経済基盤の確立」
「腐敗防止、人権など公正な経済の樹立」
は妥結したものの、
「データの自由な流通を含むデジタル貿易の自由化」
については、そもそも米国国内の反発(*1)で議論にも入れなかった。NHKも、この分野は参加国のメリットが大きいと評価しているのだが、残念な結果だ。
IPEF“「クリーン経済」など2つの分野で実質妥結” 米が発表 | NHK | 経済安全保障
先週日経紙にこんな記事が載った。産業データを活かして「新しいGAFA」を作ろうという主旨。
産業データの「GAFA」を 生成AIに続く革新に - 日本経済新聞 (nikkei.com)
重要な社会インフラを支える機器のシェアが高い日本産業にとっては、非常に意味ある協定であることは、この記事からも明らかである。日米両政府には、もう一度「貿易」での協定締結に向けた努力をお願いしたい。
*1:巨大IT企業を利するとのこと