梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

TikTokとサブリミナル

 中国と(政治的に)距離をとる国で、中国企業バイトダンスのサービス<TikTok>禁止の動きが広まっている。ただ支持率低迷に悩み、秋に大統領選挙を控えるバイデン政権は、若者に多い利用者の反発を恐れて全面禁止の措置には及び腰だともいう。

 

各国で続く政府端末でのTikTok禁止、その影響は | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

 このアプリを使うと端末機の位置情報などが中国企業経由中国政府に渡ってしまうのがリスクで、各国は政府端末での使用を禁止しつつあるとこの記事は伝えている。一方、もうひとつのリスクとして偽情報やプロパガンダを流してくる可能性もあることを指摘する専門家もいる。先の米国中間選挙で、中国が有権者の分断を図ったとの見方がそれだ。これまで「アプリ経由でデータを盗られる」ことをリスクとしていた考え方から、一歩踏み出したリスク分析である。

 

    

 

 この記事を見て、ひょっとしたらと思ったのが<サブリミナル技術>のこと。動画にプロパガンダ映像などを非常に短い時間で入れ込み、普通に観ただけでは分からないように知覚に訴える技術である。もちろん日本を含め放送では禁じている国が多いが、ネット動画についての規制は寡聞にして知らない。

 

 これも<放送と通信の融合>というテーマの中で、取り残されたサイバーセキュリティ課題の一つ。すでに多くの人がTVではなく、スマホ等で動画ニュースを見る時代であり、何らかの禁止措置が必要だと思う。TVニュースをそのままネットに流すなら、源動画は規制対象だからいいとして、最初からネット動画としてだけ存在するものなら、規制に掛からない。例えば<TikTok>のように。

 

 普通に流れている動画に、配信元がサブリミナル映像を勝手に挿入した場合、ひょっとしたら著作権侵害や名誉棄損で罪に問えるかもしれないが、一般に罰則規定はない。サブリミナルそのものの規制について調べてみたら、欧州委員会の<AI規制案>で、受け入れがたいリスク(禁止事項)の中にサブリミナル技術があるのを見つけた。

 

EUがAI規制案、世界標準を狙う 市民の権利保護と企業への投資呼び込み促す: J-CAST 会社ウォッチ【全文表示】

 

 ただし、これはAI規制の中での話。AIを使わないで画像を生成、挿入した場合はこの規制の対象外と推定される。ネット動画でのサブリミナル規制、法曹界で議論してほしいものだ。