昨日、サイバー攻撃による一次被害・二次被害・企業ブランド棄損の連鎖について紹介したが、先月のボルチモア港の衝突&橋崩落事故でも、似たような連鎖があり得ると思った。
事故原因は、電源異常によりコントロールを失った船が橋脚に激突したもの。サイバー攻撃等の兆候はないので、私としては一安心だったが、被害は途方もなく大きい。まず橋自体が、首都ワシントンDCとニューヨークを結ぶかけがえのないもの。その再建には年単位の期間が必要で、交通への支障が懸念される。
次にボルチモア港が使えなくなってしまったこと。石炭や自動車の輸出入に支障が出て、港湾労働者が職を失う(*1)との悲鳴も上がった。事故に関連した保険金総額は、30億ドルにのぼると言われる(*2)。
昨日の例に例えるなら、橋の崩落が一次被害、交通途絶や港湾の機能停止が二次被害だ。これで終わりかなと思ったのだが、どうも三次被害もありそうだ。それは、移民の不安定な労働環境というもの。
上記の港湾労働者が、事実上の日雇いで保護措置が薄いということもあるが、今回の事故での死者6名は、いずれも中米からの移民だった(*3)ことが大きい。電気系統異常の連絡を受けて橋は通行禁止になっていたので、一般利用者は無事だった。船の乗組員も助けられたが、橋の上にいた作業員のうち6名が湾に落ちて行方不明となり、死亡宣告されている。
救助活動が異様に短かった(多分24時間くらい?)ので、米国のレスキューは見切りが早いなと思っていた。熱海土石流の事故など、1年以上たっても残るひとりの捜索をしていたのに・・・。
その見切りの早さも、作業員を退避させなかった措置も、港湾労働者の失業も、全て移民ゆえと思えば納得がいく。中米・メキシコを経て米国に向かう中国人曰く「中国で稼げない。日本は待遇が悪い。だから米国」なのだそうだが、その実態はかようなもの。移民大国米国のブランドが棄損する、きっかけになる事件かもしれない。
*1:ボルティモアの橋崩落で2400人の港湾労働者が職失う恐れ-労組が指摘 - Bloomberg