梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

マイナンバーカード騒動で支持率低下

 通常国会で重要法案を沢山通し、安倍政権でもできなかったことを多く成し遂げた岸田政権。順風満帆に思えたのだが、思わぬところで躓いてしまった。それがマイナンバーカードの信頼性。主にデータ入力時のミスのようだが、銀行口座が別人に紐づいていたり、別人にマイナポイントが付与されていたり、交付時のみならず健康保険証一体化処理でもミスがあったらしい。

 

 政府は「総点検本部」を作ってチェックし直そうとしているのだが、マイナシステムの信頼性は地に落ちてカード返納の動きも加速している。返納したとSNSで発信するタレントもいて、カード交付率を増やすことしか考えていなかった自治体窓口は混乱している。「マイナ返納、岸田倒閣一揆!」という声も聞かれ、政権の支持率が急降下してしまった。

 

        

 

 そもそもマイナンバーを「見えない番号」としたことが、システム設計を歪めたと思う。番号を見せないのが前提だから、番号で種々のデータ(今回の例だと健康保険証)を連携する際に2重の本人確認を要請されるが、急げと言われてチェックが甘くなったりする。そもそも別々に出来上がってしまったシステム、

 

・運転免許

・損害保険

・パスポート

・銀行口座

・住民票

・健康保険

・生命保険

 

 などを個人番号で繋げたいというのが目的なのに、見えない番号では利便性が落ちるし、このようにミスも出やすい。

 

 本来、番号そのものはOpenで、僕が123456789012だということは、公明正大みんな知ることができる。その背後に電子証明書(*1)があって、これは僕しか行使できない。そのセキュリティは暗号技術や生体認証技術で守る。そういう見える番号で設計すべきだった。

 

 米国のSSN番号などは、最初から見える番号。ただ導入が早くセキュリティ技術が不十分で、なりすましが増えた。それゆえ、今は見せない番号として運用されている。エストニアでは「見える番号」で設計し、バックヤードのセキュリティ性を高めて効率性と安全性を両立させた。ボタンを掛け違ったマイナンバーシステム、作業ミスの総点検ではなく、再設計が必要なのかもしれない。

 

PS:NHK日曜討論での、本件の取り上げ方にはがっかり。河野大臣の「マイナンバーの名前変更・・・」はもちろん、他の識者も本質には触れてくれなかった。

 

*1:サイバー空間で「私が私であることの証明書」、電子実印とも言える