梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

中小企業の外形標準課税

 大企業と中小企業の区分は、税制上からは資本金1億円という境目がある。この数年、大企業が業容はそのまま資本金だけ減らす「減資」という措置をして、中小企業の区分に入るということが増えている。最初にこのようなことを耳にしたのは、私たちも「COVID-19」以前は良く利用していた旅行会社HISの減資。JTB日本旅行も同様のことをしていた。避けようのない不況に見舞われた旅行業界だけでなく、多くの名を知られた大企業が、中小企業化して税制優遇を受けようとしたのだ。

 

資本金減らし「中小企業化」する大企業たち、「脱税でなく節税」でも「法の抜け穴」批判も。どう防ぐ? | Business Insider Japan

 

 の記事にあるように、中小企業扱いになると、法人税や住民税法人税割の優遇が少々あるのと、法人事業税が外形標準課税の対象外になるのが大きい。欠損金の繰越控除も倍額認められる。

 

    

 

 中小企業政策でよく議論になるのは、例えば「サイバーセキュリティ対策を採ったら一部税額控除が認められる」という政策が採りにくいこと。「そもそも中小企業の大半は(赤字にして)税金を払っていないから」と行政官がNGを出す。多くのメディアは「日本を支えているのは(経団連加盟の)大企業ではなく、圧倒的多数の中小企業だ」と言うのだが、その実「圧倒的多数の非納税企業」が存在するわけだ。

 

 上記の記事は、大企業が法の抜け穴を利用しているとの意見も取り上げているが、そもそも企業の社会的責任として外形標準課税はあってもいいのではないだろうか。ただ数が多く事務処理も大変だというので、これまで減免していたのではないか。Digital活用で事務コストが下がっているいま、原点に立ち返って中小企業にも外形標準課税をすれば、抜け穴はなくなる。

 

 ただ、このタイミングで「大企業の減資による税の抜け穴」を取り上げることは、インボイス導入前夜に似ているような気もする。あの時は消費税を着服する「益税」事業者が怪しからんとの記事が始まりで、それまで事務手続きが煩雑という理由で免税されていた事業者にも課税するということになった。

 

 基本的には企業の規模に関わらず外形標準課税をするのは、税の公平という意味で正しいと思う。ただそのような税制を検討するなら、市民に真摯に説明してくれることを政府に望みたい。