ある政治討論番組で「なぜ日本経済は低迷しているのか?」が議論されるシーンがあった。よくあるテーマだが、議論していくうちに、
・アメリカの陰謀にやられた
・不良債権処理を誤った
・画一化された教育が良くない
などととっちらかってしまうのが常である。しかし、今回は、かなり本質に迫る議論になった。
◇司会
かつての日本企業は「世界にないものを創造する」という経営者がいた。しかしそれをやると3~4回は失敗する。失敗が重なると退陣させられるので、経営者が挑戦しなくなった。
◆経済評論家A氏
コストカットばかりになり、政治に働きかけて派遣法を改悪、非正規労働者を増やすことで目先の利益がだせるので、その環境に経営者が安住した。
◇経済評論家B氏
円高と同時にグローバル化が進み、製造拠点を海外に移していくことで利益が出せた。このやり方だと、成功は約束されているし挑戦も必要ない。
とここまでは、経営者が良くないというトーン。ITや海外事情に疎い経営者が生き残ってしまったのが良くないという意見も、ほぼ同根。しかし、
◆政治評論家
内部留保を貯め込むだけの経営者に対して、欧州なら政府が注意を促し、是正しなければ何らかの措置を採る。
言外だが、日本政府が無策だったという意見。
◇経済評論家C氏
無能無策な経営者を糾弾するのは、市場の仕事。日本経済社会にはそのような力が大きくなく、挑戦しない経営者を生き延びさせた。
この意見が、私には一番納得できるものだ。結局「失われた30年」の主犯は株主なのだ。先月、日本企業は共同体(ゲゼルシャフト)から抜け出せていないのが問題だと言ったのだが、機能体(ゲマインシャフト)になるためには自己改革はもちろんだが、外部からの圧力も必要なのだ。
ピンチこそ構造改革のチャンス - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
にあるように、窮地に立ったこの企業を再生するため新社長らは海外の株主(基幹投資家ら)への説明に奔走している。
日本企業の株式を持つ人たちには、その企業を成長させる責任もあるはず。政府や証券会社もただ「NISAを拡充します」だけではなく、正しい株主の在り方(株主リテラシー)をもっと伝えるべきではないだろうか。