イスラエルが闘っている相手は、テロリストとしての<ハマス>なのだが、<ハマス>はイランからの支援を受けなければ存続できていない。レバノンにいてイスラエル北部を脅かしている武装組織<ヒズボラ>同様、イランがイスラエルに向けた「刺客」と考えることも出来よう。
今回、イスラエルのサイバーセキュリティ事情に詳しい人と意見交換する機会があった。彼によると、2020年からの主なイスラエル対イランの「サイバー戦争」はこんな具合だった。
1)2020年4~5月
イランがイスラエルの水道インフラに対し、塩素量を増すなどの攻撃を実施。水道停止に至った地域も出た
2)2020年5月
イスラエルがイランの港湾・交通システムを攻撃
3)2020年7月
イスラエルがイランのウラン濃縮のための設備(遠心分離機)を開発する施設を攻撃。火災を発生させる。加えて医療施設でのガス漏れも発生
4)2020年7月
イランも反撃、イスラエルの交通システムで多数の障害が発生
5)2021年4月
イスラエルがイランの核施設を攻撃、遠心分離機稼動のタイミングで、機器が損傷した可能性がある
6)2021年10月
イスラエルがイランの燃料販売システムを攻撃
といった次第。1)の件は、2021年にフロリダのとある町での事件(*1)と似ている。2)の件は、今年7月に名古屋港で起きたことに近そうだ。イスラエルはやはりイランの核武装を警戒して、遠心分離機などを主目標にしているようだ。1981年にはサダム・フセインが建設中だった原子炉を空爆(*2)したこともある。
見えないサイバー空間では、すでにイスラエルとイランは全面戦争状態なのかもしれない。この紛争でも、リアル戦闘以外について、各国のデジタル諜報機関があらゆる手段を使って注視していると思われる。
*1:水酸化ナトリウム濃度が100倍にされたが、センサーが検知して実被害はなかった。本気の攻撃ならセンサーをまず無力化するから、本件はお試しではないかとの説がある。