先週、アラブ首長国連邦(UAE)の首都ドバイで開催されたCOP28に出席した岸田総理は、エジプトのシシ大統領と会談し最大2億3,000万ドルの支援をすると約束した。イスラエルのガザ攻撃によってパレスチナの人達の苦悩を救うキーとなるのはエジプトだし、他にできることの少ない日本としては適切な支援だったと思う。
しかし国内の反応は冷淡、というより批判的。「国民(生活)無視の、外面・バラマキ外交」との声がネット上に溢れた。全てが国民の支援に使われるのではないが、補正予算13兆円を国会で通しているにもかかわらず・・・だ。
無論、自民党のパーティ券、裏金問題などで国民が怒っているのは分かるが、国際社会にはもっと困って、怒っている人がいるのも確かである。
困っている・・・と言えば、国際社会の最大課題は、ウクライナ紛争でもガザ紛争でもなく、気候変動問題だ。石油資源で成り立ち、先進国の数倍のエネルギーを国民一人当たりで消費しているUAEという国でCOPが行われるのが、何かを象徴しているようにも思う。
化石燃料の消費をどう減らしていくかが焦点だが、この点について直接的な結論は出なかった。その代わりというわけではないが、2030年までに再生可能エネルギーの発電量を現在の3倍、エネルギー効率を2倍にする誓約に110ヵ国が参加している。
もうひとつ注目されるのが、原子力発電の設備容量を2050年までに現在の3倍にするとした有志国の宣言。日本を含む20ヵ国以上が賛同(*1)している。米国政府高官が「米国は原子力をクリーンエネルギーの一部に位置付け」という発言は、閉塞感漂う原子力産業や技術者にとっては朗報である。
仮に日本国内の原子炉増設が難しくても、発展途上国含め原子力技術の展開ができれば、産業も技術者も救われる。いかに白眼視されても「廃炉にするにしても技術者は必要(*2)」なのだから。