国内では非難の声が高い岸田政権だが、外交・安全保障面では着実に成果を挙げていると思う。今回、インド太平洋安全保障枠組みであるAUKUS(*1)に、限定的な技術参画ではあるものの、日本が連携できる可能性が出てきた。
AUKUS、日本と防衛技術協力を検討 中国抑止狙う - 日本経済新聞 (nikkei.com)
大西洋にはNATOという集団安全保障の同盟があるが、太平洋にはそれはない。日本も日米安全保障条約はあるものの、個別の同盟で米国頼みに偏った安全保障体制下にある。今NATO加盟に時間がかかるとしてウクライナが、英独仏蘭などとの個別安全保障協定を結んでいるが、ロシアの隣国としての日本も同じ状況にあるとも言える。
TPPやIPEFは経済協定であって、安全保障連携ではない。唯一太平洋でそれに似たものといえばAUKUSだが、現時点では米英豪の3ヵ国だけ。ニュージーランドが加盟希望というが、これにカナダが加わっても所詮「Five Eyes」と称するインテリジェント同盟の範囲に留まる。
無事に政権を維持できれば、岸田総理は4月に国賓として米国を訪問することになる。その時の「成果」としてのAUKUSとの連携なら、これは歓迎すべきことだ。原子力潜水艦を除く防衛技術開発とのことだが、日本自身が核武装を想定しないなら、原子力潜水艦も必要ない(*2)。
この度NATOに加盟が決まったスウェーデンが、非常に静粛な通常動力潜水艦でバルト海に十分なにらみを利かしているのと同じことだ。この記事ではドローンなどの新戦術兵器のR&D協力などが例示されているが、例え「Five Eyes」への道が遠くとも、日本が安全保障に貢献できる技術分野は少なくない。
直ぐに太平洋版NATOに繋がらなくても、多層的な安全保障外交関係を持つことは重要である。日本が出来ることは、まだまだ多い。