梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

デジタル社会はエネルギー革命を求む

 先ごろの<ダボス会議>では、OpenAI社のサム・アルトマンCEOが「AIには原子力(発電)が必要」と発言した。AIの優秀性は知られているが、結果を導き出すにあたっては大量の電力を必要とする。脳の消費エネルギーに対して、現状の技術では数ケタ上のエネルギーを喰うというのは良く知られている。

 

 20年以上前のことだが、霞ヶ関の会合(*1)でデータセンタ誘致の条件に安定的な電源があることから「小型の原子力発電所を作り、その周りにデータセンタを配置する」ことを提案したこともある。自然エネルギーと違い、一定の電力を安定供給できる原子力発電所と、大量の電力を安定的に欲しいデータセンタの相性はとてもいい。それがAIの登場によって、よりクローズアップされた発言である。

 

        

 

 より進んだデジタル社会を支えるには、やはり安定したエネルギー供給が必要である。最近核融合発電の議論や実験結果が多く報道されるようになったのも、そんな背景があるだろう。私もその技術については、いろいろな意味(*2)を含めて大いに期待している。

 

 もうひとつ「核電池」という新技術も登場し、試作品が完成したとの報道もある。その仕組みについては、下記の記事が分かりやすい。

 

劣化ウランを蓄電池「レドックスフロー電池」に再生、世界初の成果目指す|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 (newswitch.jp)

 

 中国が試作した核電池は大きめのコインほどの大きさながら、50年間充電しなくても携帯電話に電力を供給できるという。ただ、この話はミスディレクションだ。誰も、携帯電話を50年間使い続けるわけがない。多分、直近の利用分野はEVだろう。例えば1年間でも充電不要なら、電力ステーションのインフラ投資が要らなくなる。電池容量が心もとなくなったら、車検(日本の話だが)の時に電池を乗っけ替えればいい。

 

 ただ「核電池」の廃棄はどうするのだろうか?ドローンの動力源にすることもありそうだが、それが撃墜された場合劣化ウラン弾以上の問題にならないか?専門家に会ったら聞いてみたいテーマである。

 

*1:地方経済活性化とデジタル政策を議論したもの

*2:純粋なエネルギー供給だけでなく、原子力技術者の育成や研究開発力強化のためにも重要だ。既存原子炉を廃炉にするにも、技術者は必要であるから。