強硬なイスラエルの、特にネタニヤフ首相が就任して以降のパレスチナへの圧力は確かにひどい。しかし抵抗運動とは言っても、5,000発ものロケット弾を撃ち込み、壁を越え空から、海から同時に侵入して民間人を虐殺し、200人あまりの人質を攫ったハマスの暴挙を許せるものではない。
挙国一致内閣を作ったイスラエルは、ガザ地区をほぼ完全に封鎖、空爆を繰り返している。電力を断たれたガザ地区の人道危機は頂点に達しようとしているし、本格的な地上侵攻の時期も迫っている。当面の問題は、
1)人質の解放
2)ヒズボラ等の蠢動の阻止
3)地上侵攻の停止
4)十分な人道支援
5)ハマス(の敵対行動)の根絶
なのだが、私の感覚で解決の容易な順に並べてみた。異論は甘受するが、3)が最大のヤマ場である。
本格的な地上侵攻を始めてしまえば、市街戦・地下要塞戦の泥沼に陥り、イスラエル側にも多くの犠牲者が出る。その復讐のため、さらに大規模な攻勢をかけ・・・という負のスパイラルになる。イスラエル・パレスチナ双方にとって悲劇的なことだ。
今は、双方が最悪の悲劇を前にしての我慢比べをしている状況だ。米国はじめ欧米6カ国は、イスラエルのテロに対する自衛権を認めながら、人道的な保護措置を取るようイスラエルに求めている。イスラエルは「ハマスを根絶」というが、ハマスとは人でも組織でもなく思想なので、根絶できないのは明らかだ。
悲劇的で、ある意味悪魔的な当面の決着としては、
「空爆、砲撃などで、パレスチナ側に1.5万人ほどの犠牲者が出ること」
ではなかろうか?2016年の紛争でも、イスラエル側に13人の犠牲者が出て、パレスチナ側で135人が亡くなって決着した。イスラエルは自国の犠牲者の10倍の被害を与えれば、それなりに収まる傾向にある。イスラエル国内の沸騰している復讐論が収まるまで「多くの人質を奪還するまで侵攻は控える」との言い訳も成り立つ。
イスラエル最大の支援国米国では、既存メディアはユダヤ資本やユダヤ人記者の存在が大きかったが、そうではないメディア、デジタルメディアも増えてきている。既存メディアから比較的遠い若い人たちは、べったりのイスラエル寄りではなくパレスチナにもシンパシーを感じているという。
何とか地上侵攻という悲劇を避け、時間をかけて事態収拾をはかるのが、世界にとっての最上の選択肢のように思う。