デジタル産業は飛躍的な技術発展によって、急激な成長を続けている。もちろん競争は激しくその時々でHOTな分野は異なるが、産業全体としてはずっと右肩上がりである。今HOTな分野といえば「AI事業」だが、現時点ではまだ投資の方が圧倒的に大きく、将来期待は大きいが現時点では「金食い虫」。
事業が軌道に乗り、まだまだ天井など見えていないのが「クラウド事業」。コンピュータ ~ システム ~ データセンターと集積されてきたIT基盤がたどり着いた究極のサービス形態で、全世界で利用が急増している。事業は伸びていて当たり前である。ある中堅クラウド事業者は、前年同期比25%増の売上げを挙げたものの、市場は同社のクラウド事業成長が鈍化したとネガティブな判断をし、一晩で1割近く株価が下がった。
一方、中国検索大手「百度」は、全体売り上げは前年同期比6%成長(利益は23%増)したものの、クラウド事業では2%の売り上げ減だと発表した。
百度クラウド 初の減収背景|au Webポータル経済・ITニュース (auone.jp)
この記事によれば、同社はマイナスの理由を、
・中国地方政府の、スマートモビリティ需要の鈍化
・伝統的なクラウド市場は成熟しつつある
と述べている。後者は少し信じがたい。オンプレミスのままのシステムは、ほぼ無限にあるからだ。やはり前者がありそうな話で、地方政府やデベロッパーの街づくり予算が、枯渇しかかっていることを窺わせる。やはり中国の経済問題は、単なる不動産不況に留まらなかったのだろう。
一方で、中国の大手企業が米国プラットフォーマーのクラウドを採用するケースが増えているとも伝えられる。例えば、今後大きな成長が期待できるEV大手「BYD」が、「AWS」を採用した件だ。自国の企業データが米国企業にゆだねられるのを嫌うなら、中国政府は(空きがあるはずの)「百度」のクラウドを勧めたはず。
クラウド事業から、中国の経済問題やデジタル政策の見えなかった何かが垣間見えるかもしれないと思わせた報道だった。