梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

たかがゲーム、されどゲーム

 昨年末、中国の習政権がオンラインゲーム規制案を公表するや、テンセントなど関連企業の株価が急落した。約11兆円の時価総額(*1)が吹き飛んだとする報道もあった。たかがゲームなのだが、スマートフォンとインターネットが当たり前の中国では、非常に重要なコンテンツだし市場である。

 

 日本のオンラインゲーム市場は約1.5兆円だそうだが、中国のそれは5兆円を上回る。やはりデジタル産業叩きで規制強化されていた2022年には、前年比10%減でこの規模。2023年には回復基調で6兆円の声もかかっていたが、年末に水を差された形だ。なぜ当局が規制に乗り出したかというと、

 

・若者が依存症になっている

・過度なギャンブル性を帯びてきた

 

 などにより、若年層の失業や非婚化、少子化につながると考えたかららしい。ただ株価急落を受けて、規制担当の局長のクビがすげ変わったとする報道もあるので、規制案は撤回されるかもしれない。

 

    

 

 これについて、Forbes誌は面白い分析記事を発表している。

 

中国、習政権のゲーム規制案は世界経済への「ストレステスト」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

 習政権は、市場は開かれていると外国からの投資を呼び掛けているが、一方で教育産業やデジタル産業に規制をかけ「儲けすぎの連中を叩いて、共同富裕を目指す」と国民に示している。もちろんこれは、毛沢東政権やポルポト政権がやった「共同貧困による平等」政策である。この記事は、習政権のこのような動き(言行不一致)が繰り返されることが、世界経済への「ストレステスト」だと言う。

 

 今回は基幹産業とは言えない(たかが)ゲーム市場のことだったが、今後より社会インフラに近いアプリケーションや、教育・デジタル以外の産業でも「党が賛成しない産業は成り立たない」姿勢を見せれば、ますますヒト・モノ・カネ(&情報)は中国から逃げ出していくだろう。今年は「台湾有事」より、中国国内市場規制の方が気になる1年になるかもしれない。

 

*1:テンセントHD、ネットイース、ビリビリの3社の株式合計