梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

もう一人「古い戦友」からの贈物

 昨年、NTTグループのCISOであり、サイバーセキュリティ業界の「戦友」でもある横浜信一氏から贈られた書「サイバーセキュリティ戦記」をご紹介(*1)した。今年になって、もう一人古い「戦友」から「テックラッシュ戦記」という書(*2)をいただいた。NTTグループも30万人の従業員を持つ巨大企業だが、こちらアマゾンは年間100兆円近い売り上げをあげる巨大企業である。

 

 この書の著者は渡辺弘美氏、旧通産省からアマゾン合同会社を経て、現在は公共政策をアップグレードする企業の代表である。私が経団連(この書に言う内資系テック企業のロビイスト)の一員、彼が在日米国商工会(ACCJ)の一員として、デジタリゼーションを阻む規制の撤廃などを求める議論をした。

 

        

 

 また欧州の厳しい規制案(*3)に対し、データの流通・活用こそが経済成長に役立つと例をもって示し、TPPの電子商取引章に「国境を越えるデータの自由」などを盛り込むように働きかけた。アマゾンの業容が広いことから渡辺氏は、置き配容認、電波規制緩和、国境を越える商取引の消費税、金融機関のクラウド利用、電子出版に関する著作権など多くの分野で功績を残している。これらデジタルロビーイングの実例8つが、この書のハイライトと言ってもいい。

 

 例えばクラウドというサービスは、実際にどこのデータセンターを使っているかは、分かる必要がないもの。しかし従来の金融庁の規定では、金融機関の業務を受託している住所は明示しないといけないし、立ち入り検査をされることもあり得る。旧来の規定では、標準的なクラウドの利用はできなかったのだ。

 

 「戦友」の書から、昔のデジタルロビーイングの経験を思い出した。今後多くの人がこのような活動を引き継いでほしいものである。

 

*1:NTTグループの「Intelligent Dozen」 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

*2:デジタルロビーイングの歴史に学ぶ - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

*3:プラットフォーマー規制や個人情報保護