中央省庁のシステム開発・運用は、かつては<国策SIer>に任せるのが普通だった。それは洋の東西を問わず、英国でもその傾向はあって、国策企業ICLに英国政府システムは多くの発注が流れた。ICLが経営不振に陥った後は、同じIBM互換機メーカーだった富士通がICLを子会社化して営業を続けた。今年大事件になった<ポストオフィス冤罪事件>の背景(*1)がそこにある。
今の日本の省庁システムは、そこまでの偏りはない。これまで、政府クラウドを外資系メーカー2社にしていることでもわかる。ただ、やはり大手のSIerやサービサーに頼っていることも事実だ。今回、日本のスタートアップ育成政策の一環なのだろう、省庁システムの入札にあたりスタートアップを優遇するとの報道(*2)があった。
この記事だけでは詳細がわからないが、普通に考えてスタートアップ育成にはつながらないと思う。第一、私がスタートアップCEOなら、この受注が無ければ倒産する・・・くらいに追い詰められていなければ、受注することはない。
確かに、省庁システムを受注し順調に稼働させたという実績は、SIerにとって有利な営業トークである。自治体などの発注者にとっては、この企業を選ぶことを上司に説明しやすい。ただ、それは上手くいけば・・・ということが前提。
まずシステムの発注側が、十分な業務知識とデジタルのリテラシーを持っていることが必要だ。かつて各府省の担当官は、民間大手企業の発注者に比べて、この点が弱かった。それが、システム不良や納期遅延、予算オーバーなどにつながった例はあまたある。個別に似たシステムを発注して運用する、無駄も多かった。そこで「デジタル庁」が発足して、中央省庁システムに関して一括管理をするようにし、民間技術者・経験者も多く採用している。
<続く>