梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

耐震化だけではないミッション

 今月から、上水道の整備・管理業務が、厚労省から国交省に移管された。以前から下水道は国交省担当だったから、上下水道の管理元・責任元が一元化(*1)されたわけだ。当面焦点が当たっているのは、今でも断水地域が多い能登半島地震の普及や、他の地域でも起きうる被害の軽減である。土木工事については、衛生管理には長けている厚労省も不得手、妥当な「省庁再編」であろう。

 

 社会インフラには相互依存性があり、このケースでは道路や河川(堤防)と水道の相互関係である。特に道路は、電力や通信(*2)インフラのベースとなるケースも多いので、国交省が社会インフラの有力プラットフォーマーだとも考えられる。

 

    

 

 私自身も国交省の技術部会メンバーとして、社会インフラ整備の議論に参加している。そこで強調しているのは、デジタル化される社会インフラの防御。多くの部会員は土木・建築・経済の専門家で、自然災害対応の議論に傾きがちなところ、私はサイバーリスクへの対応も呼びかけている。

 

 今回の上水道管理部署の移管についても、海外では上水道システムをクラッキングして、水酸化ナトリウムや塩素の濃度をリモートで上げてしまう例をひいて警告した。イランとイスラエルの暗闘で、この種の攻撃が行われた(*3)のが最初らしいが、米国(イラン曰く大悪魔)でも被害があり、イランだけではなく中国のハッカー集団の脅威も高まっているという。

 

水道システムは「サイバー攻撃」の格好の標的、米当局が警告 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

 私がいくつかの府省と付き合った経験では、理系技官が多くその処遇が高いほど、当該省庁のデジタル政策に対する真摯さが高い。国交省総務省経産省に劣らないポテンシャルがあって、予算も大きい。デジタル化された社会インフラを護る能力は高いと、期待する次第である。

 

*1:上水道の整備業務 厚労省から国交省に移管 水道管理を一元化へ | NHK

*2:5G通信でも高周波になると直進性が高く、道路信号の上に中継局を置くと便利との指摘もある

*3:イスラエル対イラン、サイバー空間の暗闘 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)