ガザ地区の状況は、飢餓などは一層深刻になっているが、イスラエル軍の攻撃はやや緩和されているようだ。避難民がひしめき合っているラファ侵攻は行われず、イスラエル軍はガザ南部から撤収しているとも伝えられる。これは明らかに、NGOの<World Central Kitchen(WCK)>が、欧米国籍の7名の犠牲者を出したことの影響(*1)である。
しかし、国連のグテーレス事務総長の懸念はまだある。「イスラエル軍がAIを使って爆撃目標を選んでいる」と非難(*2)し、これが事実かどうか米国はじめ各国が調査を始めたという。グテーレス事務総長は昨年、AI兵器が野放しになる事態を憂慮して、国連に専門機関を設置し、2026年までに法的拘束力のある「AI兵器禁止規定」を作りたいとしていた。
これに対し、AI兵器の(全面)禁止は望ましくないし、ある意味できるはずもないと考えた米国政府は、先手を打つように「核兵器をAIに委ねない」や「各国がAI兵器利用原則を開示する」などの5原則を規制案として公表(*3)している。
多分、グテーレス事務総長は「米国案では甘い」と思ったのだろう。すでにAI兵器が(非人道的に)使われていると指摘して、国際世論を巻き起こそうとしたのではないか。世界中が注目しているガザ紛争で、AIが爆撃目標を選び、あるいはハマス構成員の識別するために使われていると示せば、その効果は大きい。
AIは利用分野の拡大が続いていて、課税の議論も始まっている。
AI課税の対象となるのは・・・ - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)
AI企業の創業者は私に「いずれ全システムはAIになるので、定義は気にしていない」と言った。利用側としてはそうなのだろうが、課税や兵器としての禁止対象になるのであれば、やはりちゃんとした定義は必要。
グテーレス事務総長と新設される国連専門機関では、ちゃんとしたAIの定義から議論を始めて欲しいと思う。
*1:7人の命が代えた「潮目」 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)