気が付けば、日本の新紙幣発行まであと3ヵ月しかない。現役時代ATMの製品企画・事業企画に携わったことがあり、紙幣切り替え時の苦労について多少は分かる。 ATM等関連機器の開発部署では、発行前から厳重な管理の下で新紙幣サンプルを貸与してもらい、鑑別機構の改良にとりかかっているはず。
アルゴリズムやコードの改変で済めばまだしも、ハードウェアの改変(例えば新規にセンサー開発)をすることになれば、開発工程だけではなく、現行機のUPDATEもより大変になる。今回の新紙幣は3次元回転画像を刷り込むというから、多分ハードウェアにも改良と機器の入れ替えが必要になるのではなかろうか。
このところ設置台数を減らしているATMはともかく、紙幣鑑別機構を組み込んでいる機器は、
・交通機関の切符自販機
・外食店の食券自動販売機
・公共交通機関等の両替機
など多岐にわたる。これらを全部改変するのは非常に手間とコストがかかるはずだ。その一端を見せてくれたのが、この記事。
新紙幣の対応に100万円かかる!? 「しんどい。これ以上は…」ラーメン店の嘆き:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
写真は小田原駅にある「箱根そば」で食べたかき揚げ蕎麦のものだが、比較的規模の大きな外食チェーンはともかく、小規模外食店での負担は非常に重い。日本円という通貨の信用を守るには必要な措置なのだろうが、事業者に負担をかけることは間違いがない。AI利用など偽造技術の高度化も予想される中、新紙幣のセキュリティはいつまで保てるのだろうか?次の新紙幣発行を少しでも先延ばしにするには、政府・日銀はどうすればいいのだろうか。
・そもそも流通紙幣として国際的に高価すぎる一万円札を廃止する
⇒ 現在の流通紙幣の95%は一万円札
・キャッシュレス決済をより促進する
⇒ セキュリティは決裁(民間)事業者に負うところが大きい
一方、民間事業者としてはまるきり現金を扱わないという選択もありそうだ。
これは今年ロンドンでみかけた、Amazon Prime会員専用のスーパーマーケット。もちろんキャッシュレスである。大手事業者はより効率的に、零細事業者の負担は増してゆく・・・明確なDX格差である。